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地獄の種類はいろいろある

世の中には「ブラック企業」と呼ばれる会社がある。だが、ひと口に「ブラック企業」と言っても、実際にはいろいろな種類があるように思う。

「ブラック企業」というのは労働環境が悪い会社の総称なので、その原因はさまざまだ。典型的にイメージされるのは、経営者が暴利をむさぼっていたりするパターンだが、実際にはそう多くないような気がする。

たとえば、会社が儲かってしょうがないときは、受注が増えるので、一時的に労働環境は悪化する。昭和の時代は、作ったそばからモノが売れていくので、どんどんモノをつくる必要があったため、みんな猛烈に働いたのだろう。

また、誰が悪いというのでもなく、業界がまるごとブラックだ、というのも結構ある。飲食業界などはその代表である。僕がかつて働いていた物流企業もそんな感じだった。とにかく慢性的に人手不足で、しんどかった。

ちなみに、物流倉庫で管理職として働いていたときに、しんどかったのは「仕事の割り振り」である。たとえば、3時間ぐらいでできる仕事を受注したとする。しかし、現状の現場作業員に余力はないため、3時間の作業を割り振ることはできない。

かといって、3時間の作業ではフルタイムの人員を雇うこともできない。なので仕方なく、スタート時点では管理職が代わりに作業したりしていた。これは、誰が悪いというわけではないのだが、構造的にそうなってしまう、というものである。

また、一般的に「ブラック」な労働のなかには、そもそもそういう「生き方」の問題だ、というのもある。たとえば漁師は朝三時に漁に出たりするが、それが「ブラックだから」ではない。そういう生き方なのだ。

24時間365日家畜のことを考え続ける酪農家も同じことである。そういう意味では、アニメーターや漫画家などの仕事もそうかもしれない。

しかし、たとえばライン工みたいな単純作業で、毎日16時間働きたい、という人はいないだろう。精神的にも、肉体的にもぶっ壊れてしまう。それは、いわゆる奴隷労働のようなものだからだ。

なので、一日16時間働ける人はいるだろうが、それを嬉々としてこなせる人は、単純作業に従事しているのではなく、研究者とか、起業家とか、何か大義があって、それに向かって邁進している人だ、といえると思う。

一番つらいのは、意義がよく見いだせない仕事、ということになる。僕は前の会社で、絶対に成功しないし、そもそもなんのためにやるのかよくわからないようなプロジェクトの責任者にさせられたので、最終的に会社を辞めた。

肉体的にしんどいことが大変なのではなく、やりたくない、意義が見いだせないことをやり続けていると、そのうちぶっ壊れてしまうのだろう。

上記のようなことを、モバイル事業の低迷でやや迷走している楽天を見ながら思った。はたからみていても相当きついので、つらい思いをしている社員もいるのではないか、と。

まあ、もともとゴリゴリの営業系の会社だし、かなり体育会系の感じもあるので、これぐらいどうということもない、という社員もいるかもしれないが。


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