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家電・家具を持ち歩く意味ってありますか?

高校生ぐらいの頃から継続的に日記をつける習慣があるので、たまに過去の日記を引っ張り出して読み返している。

昔から、手書きの日記帳ではなくてWordで書いていたので、当時のテキストデータは端末を買い換えてもデータとして残っており、今はDropboxを経由してすべて僕のiPadの中に入っている。日常の記録なので他人が読んでも全く意味はわからないが、あらためて読み返してみると当時の光景を鮮明に思い出すことができる。

中でも感慨深いのは、就職したばかりの頃の日記だ。僕は三重県四日市市というところで生まれたのだけれど、できれば県内の大学ではなくて名古屋の大学に行きたいと思った。なので、適当に受けて受かった名古屋の私大に通うことになったのだけれど、一人暮らしをするほどの金銭的な余裕はなかったので、自宅から通学していた。

だいたい片道2時間ほどだったが、まあ大学生は暇なので、それでもなんとかなっていた。

就職ももちろん愛知県の会社に就職した。最初の勤務地は名古屋市内だったので、車通勤でも片道1時間ほどしかかからず、それでの通学のことを思えば余裕で実家から通えるのではないかと思った。

しかし、いざ就職して働いてみると、そんな人は周りには誰もいなかった。本社勤務のデスクワークの人だったらいることはいたのだが、当時は職種も肉体労働トラックドライバーだったこともあり、勤務時間も日によっては12時間を超えることなどザラだった。

そんな中、往復2時間かけての生活が成立するはずもなく、3ヶ月ほどで実家を出て一人暮らしをすることに決めた。

はじめての一人暮らしだったので、まず何を買えばいいのかわからなかった。母と姉が引っ越しの手伝いをしてくれるというので、引っ越し先近くのショッピングモールイオンで色々と買い物をした。

その時、母がクレカで冷蔵庫や洗濯機などの家電を就職祝いだと言って買ってくれたのだけれど、新品の家電というのはそんなに高いのか、と驚いた記憶がある。当時の自分の貯金からは容易に支払えない金額が母のクレカから引き落とされていくのを見て、一人暮らしというのはとにかく金がかかるもんだな、とやたら客観的に考えたりしていた。

その時点の自分の経済力では、新しい家の敷金・礼金と家賃を払うのが精一杯で、引っ越し費用も含めてほとんど余裕はなかったので、仕方がないことではあったのだけれど。

ただ、せっかく買ってもらった家電も、結局長くは使わなかった。その一年半後に海外赴任が決まってしまったからだ。まさか家電を海外に持っていくわけにもいかなかったので、近所のリサイクルショップに引き取ってもらった。

当然、リサイクルショップなので本当に二束三文としかいえない金額で売り払ったのだけれど、せっかく母が買ってくれた家電をそのままゴミ箱に放り込んでしまったようで、なんとも後味の悪い結果となった。

それから、僕はなんだかんだ7〜8回引っ越しをしたのだけれど、いちいち引っ越しのたびに荷物が増えるのがイヤで、家電品や家具をほとんど所有しないようになった。

家具や家電などはいつまでも持っていても、そのうち二束三文で売り払わねばならない時がくるので、高い初期費用をかけてそういったものを購入するのはまったく合理的ではないと思う。

僕は名古屋の次は中国の上海市に住んだのだけれど、中国の賃貸物件というのはむしろ家具付きが当たり前で、むしろ家具やインテリアのラインナップで勝負しているようなところさえあった。実際、僕が住んでいた家は家の中にバーカウンターがあったり、レールライトが標準装備だったり、絵画が掛かっていたりして、なかなかのものだった。

日本の賃貸物件は基本的に伽藍堂がらんどうの状態で賃貸サイトなどに掲載されているので、見ていてもあまり面白くはないし、広さや立地ぐらいしか比較要素がないのもつまらない。中国は「家具の利便性の高さ」「豪華さ」「住みやすさ」も賃貸の要素として重要であり、内覧をしてもなかなかバリエーション豊富で面白かった。

また、上海市内で一度引っ越しをしたのだけれど、荷物が少ないので引っ越し費用もまったくかからなかった。

もともと名古屋で住んでいた家での家具を売り払ったエピソードを母に話したとき、「そんなことあったっけ?」と母は全く憶えていなかったのだけれど、僕はちょっとしたトラウマみたいになっていて、以後、帰国してからも家具や家電を買うことは基本的になかった。

帰国直後は社宅の家具付きアパートレオパレスに住んでいたのだけれど、東京に引っ越してからは、家電・家具のレンタルサイトを利用したりしていた。

日本人はインテリアにこだわる、というのはわかるのだけれど、本当にみんな家の内装のコーディネートにこだわりがあるのだろうか。むしろ、引っ越し時に家具や家電がもともと備わっていて、むしろしっかりとコンセプトをもってコーディネートされている、という住居を「選ぶ」という行為もしっかりとした需要マーケットがあるのではないか、と思い始めた。最近、じわじわと市民権を得ている民泊も、利用の決め手は部屋の内装というか、部屋の「雰囲気ムード」にあるのではないか、と思っている。

海外では一般的な家具付き物件が、日本ではあまり一般的でない背景としては、日本人はそうしたものを好まないのではないかという「思い込み」にあるような気がしている。

しかし、実際にはその需要をカバーするスタートアップも存在するようだ。

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近距離の引っ越しだったらさほど問題はないが、僕も最初に上京するときはわざわざ田舎から新幹線に乗って東京に来て、実際に物件を見て、仲介会社などを通じて大家と入居日の交渉をしたりして、なかなか大変だった。

家具や家電は前述の通り、レンタルサイト経由で「借りた」のだけれど、それの搬入日の日程調整とか、搬入されるまでの生活など、負荷が多かったのは事実だ。最初からすべてが用意された部屋だったらどんなに楽か、ということを思う。

この会社はスタートアップとして、「ニーズの隙間を埋める」ために存在しているとは思うのだけれど、こういうのが当たり前になっていくと、大家としても「いい家具や家電をコーディネートして部屋の単価を上げる」といった動きができると思うし、利用者も「自分に合った部屋」を探すことができるのでいいのではないか、と思う。

家具や家電にこだわりがある人も多いとは思うけれど、「そのこだわり」って本当に必要かな? と。一度、センスのある人や、プロがコーディネートした部屋に住んでみるとちょっとは価値観が変わるのでは……と思う。また、家そのものの雰囲気によって適した家具のサイズやデザインも変わってくるはずで、そういったところも含めて「住みやすさ」って総合的に判断されるような気もする。

僕としては、「所有すること」に対して全くこだわりがないので、オシャレに組み上げられた部屋に住んでみたいな、と思いますけどね。

一生のうちにライフスタイルも変わっていくものなので、そのときどきにおける「最適な」部屋に住むのが一番ではないか……と。

家具や家電を持ち歩くことにこだわりはありますか?

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