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大気圏から抜け出すためのカオスとハッタリ

ビジネスで、よく「ゼロイチ」という言葉が使われる。ゼロイチとは何だろうか。新しく会社を起業するみたいに、ゼロから新しいサービスや製品を作り上げることを指す場合が多い。

ゼロイチでものを作っていくのは大変である。特に、新サービスなどの場合、実績がないわけだから、そこに仕事を頼む動機もない、ということになる。実績がないから仕事が受注できない、仕事が受注できないので実績も作れない、という袋小路からスタートする。新しいことをやるときには、このループからいかに抜け出すか、というのが最初の試練になる。

このループから抜け出すにはいくつか方法がある。そのうちのひとつが、「ハッタリ」である。つまり、現状ではまだできないけれど、ハッタリをかまして仕事をとってきて、それを頑張って実現して実績にしてしまう、ということだ。

それをやると、現状以上の能力が求められるわけで、カオスな状況に突入する。しかし、最初の段階は、とにかくこういう状況をなんとかしなければならない、というようなところからはじまると思う。

マイクロソフトやアップルのような、いまでは誰でも知っているような大企業でも、黎明期にはこうした「ハッタリ」から事業がはじまっているケースが多い。

サイバーエージェントの藤田晋社長も、著書の中で「やったことがないことも、営業の場では『出来ます』と答えておいて、次に会ったときに本当にできるようにしておけばいい」というようなことを書いていた。要は、創業期は背伸びをしないと軌道にのらない、ということなのだろう。

ゼロイチで最も必要となる力は、斬新なアイデアを出すこととか、企画力などではなく、とにかくカオスな状況をなんとか形にしてしまう能力ではないか、と思う。「まだ形になっていないものを、とりあえずなんとかしてしまう」ことは、特殊な人だけがもつ能力ではないものの、優秀な人にとっても、困難の連続である。

本当の起業はしたことがないけれど、新規事業をやるような部門にいたので、起業の真似事は結構したことがある。そこで学んだのは、この最初の袋小路を抜け出すのは非常に大変で、例えるなら地球の重力圏から飛び出すロケットのようなエネルギーが必要だ。

まずは小さい規模でもいいから、商売を成立させることが先決だと思う。このサイクルを作り出すのはすごく大変である。

いま自分が勤めている会社は、実はかなり規模が大きいので、企画部門は別な苦労にあたっている。何をするにも、本サービスへの影響がデカすぎるので、そう簡単には動けない。いまの自分は企画的なポジションではないので、あんまりそういうことを考える必要はないのだが、大変そうだなと思う。

すでに安定している組織は、カオスを好まない。挑戦よりリスクのことが多く語られるような組織からは、たぶん何も生まれないのだろう。

これから新しいことをはじめたい人は、「とりあえずなんとか形にする」能力が最優先で求められる。もっとも、この能力を鍛えるには、とにかく場数を踏むしかないのだろう。

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