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昆虫は食べ物ですか?

最近、にわかに「昆虫食」がブームになっている。しかし、だいたい10年ぐらい前に「これから昆虫食がくるぞ!」という謎のムーブがあり、そのときは「へえ、そうなのか」と思っていたので、「やっとか」という感じである。

しかし、実際のところそれは思い過ごしで、さほど「来て」はいないようである。もちろん、センセーショナルなので話題にはなるものの、市場規模としては10億円程度であり、まだまだ市場としては無視できるほど小さいものだ。

話題性はあれど、メジャーといえるほどの存在ではまだないだろう。

10年ほど前に「これからは昆虫食だ!」と言っている人の中では、「コオロギ」はかなり代表的な食材? だったらしい。コオロギを食べるのが趣味みたいな人がいて、生きているコオロギを、スナック感覚で食べていた。普通に考えたら、ゲテモノ好きの変人である。

そもそも、ちゃんと調理するならまだしも、生でそのまま食べて大丈夫なの? というシンプルな疑問もある。その人はその時点では大丈夫だったのかもしれないが、大丈夫じゃないことだって当然あるだろう。

チャレンジングなのはいいことだが、なかなか怖いことである。

だが、この昆虫食ブーム? は、いろいろと不可解な点が多い。実際にどれぐらいの意味があるのだろうか。

昆虫食を実施しなければならない根拠としては、「このままのペースで人口が増えると、地球上のタンパク質が不足してしまう」というものがあるようだ。しかし、これは大きく間違っていて、「このままのペースで人口が増える」ことはない。

日本や韓国の少子化が深刻なのはいうまでもないし、中国もすごい勢いで少子化が進行していて、大きな社会問題になっている。少なくとも、「このままのペースで地球の人口が増える」ことはないのはすぐにわかる。

なので、やはり疑問の焦点は「意味がないと思われるのに、なぜブームになっているのか?」ということだ。上記のタンパク質不足を根拠として、SDGs的な文脈でキャンペーンを打っている、というような感覚だろうか。

昆虫食というのはわりと斬新な概念なので、新規軸を打ち出すという意味でインパクトはある。無印良品で「コオロギせんべい」を売りだしたのが契機とされるが、そういうインパクトのある商品開発をする部署というのがあって、とりあえずやってみた、という感じだろうか。

あと考えられるのは、ある種の反動である。食文化というのはだいたいの社会において完成されているので、むしろ伝統的な文化は失われる一方であり、その反動としてたまに新しい概念がひょっこり出てくる、ということなのかもしれない。

実際、現生人類はとうもろこしや小麦などで大半のカロリーを摂取しており、肉も牛・豚・鶏がほとんどすべてなわけで、その食材の選択肢の乏しさはかねてより指摘されている。ただ、これは反動にすぎないので、これが大きな流れになっていくことはないのではないだろうか。

実際のところ、新しい食文化はこれから作れるのだろうか? 正直に言って、コオロギなんて食べたくないし、その他の昆虫もいやである。少なくとも、そういったものを食べる習慣になっていないので、当然の感情だと思う。

しかし、それが「当たり前」の世代が誕生したら、感覚は変わるかもしれない、というのはある。しかし、あまり必然性がないのであれば、わざわざ食べる必要もないよね、というところに収まりそうな感じもしている。

コオロギしか食べるものがない、という状況になれば別だが……。

上記の「食の選択肢」があまりに細くなることから、選択肢のひとつとしてちょっとずつ混ざっていく、という未来はありうるかな、と思った。もちろん、自分はたとえそうだとしても、とても食べる気になれないというのが正直なところだが……。

郷土料理なども、基本的には廃れていく傾向にあるものだと思う。ブームはどこかで終わるものなので、そのときどうなっているかでしょう。

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