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キャリアと時間的な奥行き

経営戦略の専門家である楠木建氏の「好きなようにしてください」という本を、たまに読み返している。

読書に関しては自分ルールがあり、同じ本は一度読んだら一年間は読み返さないようにしている(仕事で読んでいる本は除く)。けれど、このルールさえ守れば何度読んでも構わないので、気に入った本は一年ずつのスパンを空けて、数年かけて読んでいる。

この本は、タイトルにある通り、個人個人のキャリア相談について「好きなようにしなさい」と繰り返し書かれている本である。
 
いまは比較的安定しているが、数年に一度は自分のキャリアについて「このままでいいのか?」と自問自答する時期がある。この本はひたすら「好きなようにしたらいいですよ」と書いてあるので、これを読み返して、「そうか、好きなようにしたらいいのか」と思い返す。

キャリアというとなんだか堅い話に思えるが、フリーターでも、専業主婦でも、それぞれの人生を歩んでいる以上、なんらかのキャリアがある。こればかりは、みなが自分自身のために、自分で作っていくものなのだ。


 
この本で繰り返し語られているのが、「仕事は環境で選ぶな」ということ。たとえば、「給料はいいが面白くない仕事、給料がよくないが面白い仕事、どちらがいいか」みたいな問題は、そもそも問題になっていない、と。

給料が多少よくても、面白くなくて身が入らない仕事をしていても、いつまでも安定した報酬が約束されているわけでもない。自分のやりたいようにするのが一番ですよ、ということが書いてあるのである。
 
この本の中で「いいな」と思う部分が、「キャリアというのは、時間的な奥行きのある問題である」という部分だ。そのときどきで、給料の優劣はあれど、人生はその後もずっと続いていく。

最初は「こんな仕事は誰でもできる」と思っていたとしても、それを継続してやっていくことで、新たなスキルに結びつくことがあるかもしれない。10年後の未来は誰にもわからないのに、40年、50年後の世界がどうなっているのかなんて予測できるはずがない。いま20代であれば、20年後でもまだ40代なのだから、バリバリ仕事をしている年齢だろう。
 
大事なのは、「いまやっていることに全力で打ち込む」ことなのだと思う。たとえそれが向いていない仕事、嫌いな仕事だと思っても、すぐには結論を出さず、一定期間、全力で打ち込むことによって、また違うものが見えてくるかもしれない。

本当に嫌な仕事であっても、全力でやることによって、次のキャリアに生きてくることもあるだろう。もちろん、やっていくうちに好きになっていく、ということもあるはず。


 
人生のうち、仕事に費やす時間は長いのだから、環境の良し悪しなどで決めるのではなくて、どういう環境であっても全力で向き合い、次のステップに繋げていけるようにしたいな、と。

こうやって、何年もかけて浸みこませていく読書もいいですね。

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