「カスハラ」を取り締まる社会は本当にいい社会ですか?
カスハラについて書かれた記事を読んだ。
カスハラというのは「カスタマーハラスメント」の略らしい。なんでもかんでもハラスメントにする風潮はここ10年ほどの傾向だと思うのだが、いよいよなんでもありになってきたな、と。
要は過激なクレーマーみたいな人を取り締まることが目的だと思うのだけれど、そんなものもハラスメントに含める時代なのか、と。もちろん暴力とか誹謗中傷みたいなものは罰せられるべきだと思うのだけれど、ちょっとおかしな人からの言動もハラスメントに含めるとなると、それはそれでなんとも生きづらい世の中になるような。
ある意味では顧客と売り手は対等なのだから、ヤバいクレーマーがいたとしても、毅然とした態度でいることが大事なのだと思う。どんなにルールで取り締まっても、ヤバい人がいることは事実なのだから、完全になくすことはできないだろう。
自衛の精神を身につけるというか、多少理不尽なことを言ってくる客に対してどう接するか、というのも生き方として大事な気がしている。そこは得手不得手というか、得意な人とそうでない人との差が出てくるのかもしれないけれど。
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とはいえ、BtoBのビジネスならまだしも、不特定多数の一般人を対象にする小売店とか、飲食店みたいなところだと大変なのは事実だ。自分も大学生のときは小売店でバイトをしていたのだけれど、ときどき異常に変な客にしつこく絡まれることがあった。どう考えても言いがかりとしか思えないようなことを言われて、ネチネチ一時間ぐらい説教されたり。
でも、相手の言っていることがあきらかにおかしいのであれば、別に何を言われても逆に気にならなかった。むしろ相手に言いたいことを言わせて、そのうえで別な商品を売りつけたりしていた。そもそも、カスハラをしてくる客というのも、もはや気分や感情でこちらに言いがかりをつけているだけなので、あんまり理屈でどうこうしてもどうにもならない気がする。
だから、こういった客との対処で何が問題かというと、結局は「社内」なんだろうな、と思う。こういう頭のおかしい客が出てきた時でも、普通の客と同じようにマニュアルどおりに対応しなければならないという状況がしんどいのだろう。
簡単な話、ヤバいクレーマーに対しては本来なら出禁にしたらいいだけの話である。昔の昭和の感覚なら、迷わずそうしていたのではないだろうか。そこをちゃんと対応するという姿勢が頭のおかしい顧客を生んでいる、といえるのではないだろうか。
ヤバいやつに対処するのは一種の交渉力である。むしろそういった人を「いなす」術を身につけたいものだ。
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クレジットカードのコールセンターで督促(支払いの催促)をする人が書いた本があり、とても面白いので、ときどき読み返している。
督促業務なんてのはカスハラどころではなく、怒鳴りつけられたり脅迫されるのは当たり前、「今からそっちに行くぞ」とか「家に火をつけるぞ」みたいなとんでもないことも言われるらしい。督促というのは要はクレジットカードの入金がないからお願いしているだけなので、そんなことを言われる筋合いは全くないのだが、頭のおかしい人は世の中どこでもいるものである。
そういう顧客を相手に「カスハラだ」といちいち訴えていては仕事にならない(この部署においては、顧客のほぼすべてがカスハラ対象者である)。むしろ、そういうトンデモない客をいかになだめすかし、借金を「取り立てる」かが腕の見せ所になってくる。そのノウハウは本にばっちり書かれているので、かなり読み応えがある。
「カスハラ」が一般的な世の中になったとき、普段から理不尽な暴言に耐えている督促OLが最強のスキルをもった社会人になる、という可能性すら秘めている。世の中に逆行して鍛える修行の地としてひそかに人気になる……ということもあるかも?
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