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「雑談力」なんてものがあるのか?

世の中には「○○力」と名付けられている能力がたくさんあるが、「雑談力」と呼ばれるものがある。今日は少しこれについて考えてみたい。
 
たとえば営業職では、雑談力が必要だと言われる。僕も昔の会社で、営業のようなことをしていたときに、先輩からそう言われたことがある。

でも、そんな能力は本当に必要なのか? という疑問が当時からあり、いまでも謎である。そもそも、雑談力とは何を指し、それは本当に必要な能力なのだろうか?


 
仕事をしていると、営業を受けることがある。先日も、とある企業の営業を受けた。

それほど遭遇率は高くないのだが、その人は仕事とは全く関係ない雑談から入ろうとしたので、話半分に聞いていると、雰囲気を察したのか、本題に入ってくれた。

商談の場で、あまり関係ない話を延々とされても、リアクションが難しいので、できれば仕事に絡めた話を話してもらいたい、と思っている。商談の席では、「雑談」といってもさまざまな種類があり、業界内の事情に通じているとか、何かについて専門的な知識がある、という内容のほうがいいと思う。そういう価値のある情報のほうが盛り上がりやすい、ということもある。

雑談力が高く、商談の成功率が高い人、ということを聞くと、そんなことってあるのかな、という気がする。もちろん、世の中にはいろんなタイプの仕事があるので、もしかしたら宴会で腹踊りをしたほうが受注しやすい仕事もあるのかもしれないが、基本的に会社組織で仕事をしている以上、意思決定プロセスというものがあるので、「なんか営業が面白かったからここに発注します」というのは通用しないのでは、とは思う。ものを売り込むとき、突破しなければならないのは、「営業先の企業の上司」なのだ。

新聞や雑誌でちょっとかじっただけのことを話題にするのも、あまりおすすめはできない。相手が全くそれについて知らなかったら多少は話のネタにはなるかもしれないが、こちらが詳しくないと、せっかく盛り上がってもそれ以上は話題を展開できない。基本的に、ある一定以上の知識や経験がないと、話題を振っても面白くないのである。

なんらかの分野で専門だったり、趣味だとしてもある程度突き詰めてやっている人ならば、話を聞いても面白いけれど、別にその人は雑談でそれを話すためにやっているわけではないだろう、と思う。何かについて詳しかったり、専門だったりするので、それについて話すときにたまたま話が面白くなるだけであって、話を面白くするためにやっているわけではない、ということだ。当然の話ではあるけれど……。
 
もしかしたら、ホストやホステスなどの水商売であれば、そういった「トークスキル」というのは重要な能力なのかもしれない。しかし、ホストやホステスは、相手に話をさせて、気持ちよくさせることでお金を得る商売なので、「雑談力」というよりは、むしろ相手に気持ちよく話をさせる能力が必要なのではないか、と思う。


 
人はどうやら、「人に何かを説明したい」という欲求があるようだ。もし「雑談力」と言われるものに実態があるとしたら、それはこちらが話したいことを話し続ける能力ではなく、相手から話題を引き出す能力だろうか。

その本質は、聞くことによる理解力であるような気がしている。


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