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「負けたくない」気持ちが敗北を呼ぶのでは?

「勝負」の強さに一番良い影響を与えるマインドセットってどういうものなんだろう、とたまに考える。

よく、勝負においては「気持ちで負けてはダメだ」ということが言われる。最初から勝てないと思っていたら、勝てるものも勝てないという意味だ。だから、「負けたくない」「勝ちたい」という強い気持ちが勝負強さにつながると一般的に思われている。事実、そのような部分もあるのだろう。

しかし、自分はどうも勝負の土壇場で「負けたくない」と思ってしまうと、本来のパフォーマンスが発揮できないことがある。本番に弱いというか、土壇場で踏ん張れない、ということだと自分では認識している。

これで結構損していることも多いため、どういうマインドセットで臨めばいいのか、ということをたまに考える。「負けたくない」と思うことによって、負けたときのことをつい連想してしまい、本来のパフォーマンスが発揮できなくなるのでは、と分析している。

どちらかというと、勝負など全く関係ない場面で、気楽にやっているときに一番よいパフォーマンスが発揮できることが多い。なので、ここ一番というときではなく、全然勝負どころと関係ないところでものすごく良いスコアを出したりする。

この手の勝負強さが求められる場面でいうと、例えば僕が趣味としてやっている将棋がある。将棋というのは技術の勝負と思われがちだけれど、メンタルに左右されるところが大きい。「ここは負けられない」「ここできっちり決めなければ」と思えば思うほど、勝利から遠のいていくことがある。これは由々しき事態である。

しかし、だからといって「負けてもいいや」「どうせ負けるんでしょ」みたいな投げやりな気持ちで取り組んでも、もちろんそれはそれでうまくいかない。

最近思ったのは、そもそも「勝ち」とか「負け」を意識しない、ということである。「勝ちたい」「負けたくない」みたいな感情が強いときは、おそらく目の前の状況に集中できていないのでは、と思ったのだ。

負けたくないと「思う」リソースがあるのなら、その分目の前の状況に集中して、どうすれば最善なのかと考えることに全力を注ぐべきなのだ。それが、めぐりめぐって勝率を上げることにつながるのだろう。

「貧すれば鈍する」という言葉がある。人はお金のことが気になると、そのことに思考力を奪われてしまい、冷静な判断ができなくなるという意味だが、これは実験でも確かめられているようだ。

被験者に「急に予定外のお金が必要になった」旨を伝えると、何も伝えなかった時に比べてテストの成績が下がるらしい。勝負ごとの前に「心配ごとをさせないように」という配慮も、経験的に知っているからだろう。

勝負に勝とうが負けようが、それを心配したところで、パフォーマンスが上がるわけではない。むしろ目の前の状況に最大限集中していくことが大事なのだろう。

なので「負けたくない」という強い気持ちが芽生えたなら、それは自分が集中できていない証拠だと戒める必要がある。何も余計なことを考えず、目の前の状況に集中する。

羽生善治の揮毫である玲瓏れいろうは、透明で透き通っている様を示しているが、最終的にはそういう境地に到達するのかもしれない。


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