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「ミニマリスト」というのは都会人の趣味みたいなもの

ミニマリストという言葉がある。最近になって言われるようになったわけではないけれど、ネットを徘徊しているとよく見かけるワードだ。

不思議なことに、あまりネット以外ではミニマリストという言葉は見かけない。リアル世界だと人は見栄を張る傾向にあるので、ミニマリスト的な生活を送っているとただ単に「貧乏なんじゃないの?」と思われたりするからだろうか。

ミニマリストというと聞こえはいいが、家にものが全然なく、家具とかもない、みたいなことを会社の人とかに知られると、ちょっと心配されそうな気がする、とかはあるかも。

僕はミニマリストではないが、客観的に見てあまり物欲はないほうだと思う。服もあまり持っていないし、何かをコレクションしていたりもしない。普通の人よりは本をたくさん読むとは思うけれど、立派な本棚があるわけでもなく、特に形式にこだわりはない。図書館で借りて読むのもOKだし、電子書籍でも問題ない。

最近は通勤中に本を読むことが多いので、Kindle paperwhiteが活躍している。電子書籍は、「本を大量に所有する」ことで得られる満足感とは無縁で、「本を読む」という機能だけがあるので、ミニマリスト向きだろう。
 
作家の佐藤優が、ロシア外交官時代にソ連崩壊を経験したらしいのだが、ソ連崩壊の渦中では「モノをもつこと」がいかに大事かを痛感した、と本で書いていた。曰く、ペンやノート、タバコなどはどれだけお金があっても手に入りにくいので、買えるときに買えるだけ買っていたのだとか。

その影響で、日本に帰国してからもペンとノートは大量に購入して保管していたのだそうだ。「モノ不足」を経験すると、そういう感覚になってしまうのだろう。

僕は基本的にコンビニとスーパーでその日食べるものを買ってきて食べる、という生活を長く続けていた。冷蔵庫の中はほぼ常にスカスカで、食料をストックしておくという発想がなかった。

最近は料理が趣味になり、けっこう食材は余ったものが冷蔵庫にあるが、そうなったのはごく最近のことである。たまに東京に台風が襲ってくると、みんな非常食を買い漁って自宅に引き篭ろうとするので、そういうときは実に困った。コンビニにも、スーパーにも、ろくな食べ物がないのだ。

自宅にストックがないので、みんなが爆買いするととたんに食べ物がなくなってしまう。仕方がないので、数年前の大型台風のときは、誰も買わなかった売れ残りの激辛ラーメンを食べて飢えをしのいだことがある。意図してミニマリスト的な生活を送っていたわけではないのだが、結果としてそうなった際に起きた弊害である。

要は、ミニマリストというのは都会人の趣味みたいなもの、ということだろう。田舎で、スーパーまで片道一時間、みたいな秘境に住んでいたとしたら、食料品のストックをしないというのは狂気の沙汰だろう。家電品だって、突然壊れたら困るから、スペアがあるにこしたことはない。

都会にいると、その日食べるものだって近所で買ってくればいいわけだから、何もストックしておく必要がない。しかし、それは社会でちゃんと流通が機能しているから可能になるわけで。

まあ、理にかなった暮らしではあるかもしれない。流通が終わると自分の生活もそれと連動して終わってしまうというのが難点だが、余分なものを買わずにすめばそれに越したことはない。

まあ、自分はたぶん向こう数十年は東京に住むと思うので、準ミニマリスト的な生活を享受すると思う。

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