なぜONE PIECEはつまらないのか?
なぜONE PIECEはつまらないのか。いきなり世界のONE PIECEファンを敵に回すようなタイトルではあるが、少しこれについて考えてみたい。
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いま、少年ジャンプで連載中の漫画"ONE PIECE"が佳境を迎えている。超人気作品なので、いまさらどういう作品か説明する必要はないと思う。
タイトルに「つまらない」と書いたが、この作品は前提として「面白い」。生き馬の目を抜くような激しい競争の少年ジャンプで30年近く連載し、しかもずーっとトップを走っているのだから。
作者曰く現在「最終章」で、実際にいつ終わるのかは定かではないものの、物語的にはクライマックスに達していると言っていいだろう。僕は電子版の少年ジャンプを購入しているのだが、ほぼONE PIECEを読むためだけに買っているようなものである。
30年近くにおよぶ超長期連載、しかも超人気作がクライマックスを迎えているのだから、そりゃ面白くないわけがない。特に最近は毎週毎週、なにかしらの新事実が発覚するので、とても面白い。しかし、どうも作者の尾田先生は体調があまりよくないらしく、最近は休載も増えている。
体調不良に加え、「構想」という名目の休みも増えている。このクライマックスをどう描いていくかは、尾田先生の中でもまだ模索中の部分があるらしい。
最近はYouTubeで「ONE PIECE考察」というのがひとつのジャンルになっている。毎週毎週、なんらかの新事実が明かされるので、その内容について、考察しているYouTuberたちがああだこうだと議論をする。そのうえで、今後の展開についての予想を立てていく。
正直、漫画そのものよりも「考察」しているほうが楽しい。いろんな可能性があり、これも考えられる、ああいうことも言える、と思考を広げていき、それが本誌で答え合わせされる。
もはやONE PIECEというのはそういう漫画になってきている。大多数の人がどう楽しんでいるかはわからないが、自分なりに予想して楽しんでいる人が多いのではないだろうか。
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なにか尾田先生の考えている「答え」、つまり「物語世界の真実」があり、それを読者が考え、予想し、的中したかどうかを喜んだり、落胆したりする漫画になっているのである。
もちろんそれはそれで楽しいし、正しい楽しみ方なので別にいいのだけれど、けっこう一方通行な物語だな、ということも同時に思う。どういうことかというと、ONE PIECEは「連載中作品だから面白い」のであって、「連載が終わってしまったら面白くなくなる」可能性が高いのである。
真相が衝撃的な作品というのはたくさんある。最終回付近になって、「実はこうでした」とネタバラシがあり、「え!?」みたいな。それが意外なものであればあるほど、読者に与える衝撃は大きく、名作として語り継がれる。
しかしそれって、最初にそのネタを知っていてもちゃんと面白く感じるのか? ということである。つまりは、2周目がちゃんと楽しめるのか? ということだ。
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ONE PIECEの連載がはじまったのは1990年代だった。あの頃は、ご存知の通り(若い人は知らないか?)ノストラダムスの大予言が有名だった時期である。1999年に人類が滅ぶ、というやつだ。
一種のオカルトブーム的なものであり、「ムー」というオカルト雑誌なども盛り上がっていた(今もあると思うけど)。
いわゆるONE PIECEにおける「実は世界はこうなっていた!!」という展開は、よくよく考えるとこういったオカルト的なものに近いな、と思ったのである。
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世界そのものを観察して、こういうことも言えるのでは? と考察を深めていくのではなく、ある日、突然世界の真相を告げられる感覚というか。もちろんONE PIECEはフィクションだし、エンタメ作品なので面白く読めるように作られてはいるのだが、「実は真相はこうでした!!」という感じの物語の作り方は、ちょっと陰謀論的な感じになってしまうな、と思ったのである。そもそも、その形式だと深みがなく、一度しか楽しめないような気がする。
スタンリー・キューブリック作品のように、見ている最中は「?」で、見終えてからも「?」のまま、一ヶ月ぐらい経つと「なんとなく、こうなのでは?」というものが浮かんでくる、というのが深みのある作品のような気がしている。
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もっとも、尾田先生が30年かけて仕込んだ伏線が回収されていく様は圧巻なので、大いに楽しむにこしたことはないのだけれど、これはいまこの瞬間しか楽しめないな、と思うのである。
だからこそ、ONE PIECEを単行本で買うのではなく、雑誌を(電子版だが)購入している。たぶん、この作品はこうやって楽しむのがベストなようにできているのでは、と思うのだ。
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