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実際「来た」のはメタバースではなかった

先日、ふと、2023年以降のトレンドは「生成AI」だったな、と思った。それこそ有無を言わさない感じである。投資家や起業家などの界隈はもちろんだが、一般層でもそのような認識なのではないだろうか。もはや、生成AIという言葉を聞かない日のほうが珍しい。

もともとは「メタバース」という言葉が最近のキーワードで、投資家や起業家はさかんにその可能性を煽っていた。本も出まくっていたので僕も何冊か読んだのだが、なんともピンとこなかった。

発端は、MetaのCEOであるザッカーバーグの構想からだと思われる。彼はメタバースに可能性を見出したらしく、主要サービスであり会社名でもあったFacebookをMetaという名前に変え、莫大な金をメタバースに注ぎ込みはじめた。

しかし、開発しているメタバースサービスが期待に反してショボく、しかもそのビジョンもいまいちわからない、ということでブームは下火になった。

いや、そもそもブームはきてすらいなかったような気がする。



メタバースがなんなのか、ちゃんと説明できる人は少ない。仮想空間? それはなんのため? 仮想空間で買い物ができたりする? そういったサービスはそれこそ2000年代からあり、まったく新しくはない。

映画マトリックスなどをはじめとするSFで「仮想世界」はさんざん擦られたネタなので、もはや新鮮味がない、というのが正直なところだろう。

在宅で仕事をすることが最近は多いが、在宅で仕事をするときは社用のチャットアプリを立ち上げて、基本的にはそれをずっとオンにしたまま仕事をしている。社内の業務連絡、つまり仕事のやり取りは8〜9割ぐらいがそのチャット経由で行われる。

職場は物理的には家で、空間的にはそこにいないのだけれど、いちおうそのチャットを立ち上げた状態というのが「職場の空間」ということになる。職場なのでなんらかの連絡がきたらすぐに対応しなければならないし、全体に対する告知があったらすぐにチェックしなければならない。

仮想的な「職場」の空間に別にいなくてもいいというか、物理的な空間である必要性はどこにもないよな、と思う。

最近、一般的なSNSの空間が気持ち悪くなってきた。というか、質がだいぶ落ちたな、と思う。Xを開くと真偽不明のフェイクニュースみたいなのが流れてくるし、詐欺広告や他人を貶める目的の誹謗中傷などが流れてきたりして、うんざりする。

YouTubeも、ずいぶん頭の悪いチャンネルが増えたなと思う(健全なチャンネルが相対的に減った気がする)。TikTokなんてのはもう最初からついていけない(そもそもインスタからついていけてない)。

最初のうちはまともな人が多かったと思うのだけれど、ビジネス目的の人や、知能指数が低い人向けのコンテンツが多いため、質が下がっていってしまっているのだろう。テレビと同じ構図である。

メタバースで成功しているものはまだないが、仮に成功したモデルがあったとしても、そのうちいまのXみたいな状況になることを考えるといまからうんざりする。趣味が合う人だったり、仲のいい人だけの空間だったらいいけれど、メタバース空間で謎の営業をかけられたり、陰謀論をまき散らされたり、知能の低いやつに絡まれたりしたらたまったものではない。

あと当然、メタバース内でも人間関係の派閥なんかが生まれたりして。基本的に「どうぶつの森」あたりがもはや完成されたメタバースなんじゃないか、という気がする。やったことないけど。

快適な空間にするためにブロックやミュート機能を搭載することも考えられるが、現行SNSがダメになってきているので、それだけではちょっと難しいのかな、と思う。

生成AIは、そういった「構想」とかではなく、突然、彗星のようにやってきた。これはビジネスモデルとかサービスではなく、純粋に技術的なブレイクスルーをしたプロダクトだからだろう。そういったものが「生まれる」段階に達したのでやってきた、という感じなのだ。

特にそういった技術を知らない一般の人は、突然やってきたこの生成AIに驚き、メタバースの道を譲った、という感じだ。 

チャットボットなどは以前からあったが、そういったものと比較しても、chatGPTに触れたときの感触は衝撃だった。あ、これは間違いなくこれまでとは全然違うものだ、と。

chatGPTも、ほかの生成AIも日々進化していて、すごいなと思う。数ヶ月で劇的に進化していく世界なので、1年後にはまた全然違うことになっているだろう。この流れが事前に読めていた人は、きっと大儲けしているに違いない。

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