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若い人に刺さらないネットサービスは……

国産の動画サイトであるニコニコ動画が衰退したと言われて久しい。以前から、プレミアム会員の減少などが指摘され、「オワコンだ」なんだと言われてはいたのだが、ここ最近ではそもそもオワコンだという話題にすらならなくなってしまった。もはや、忘れ去られた存在になってしまったということなのだろうか。

当然のように、2022年現在ではYouTubeが動画配信サイトの天下を取り、他の追随を許さないレベルになってしまった。なぜこんなことになってしまったのだろうか。
 
むしろ、いまの10代はニコニコ動画という存在を認識しているのか、というレベルだ。もしかすると、動画配信サイトの入口がYouTubeであることが多いから、ニコニコ動画というのは、話に聞いたことはあるという程度で、そもそも使ったことはない、という人も多いのではないだろうか。

インターネットのサービスでつくづく怖いなと感じるのは、よく言われる「Winner takes all(勝者がすべてをもっていく)」の原則だけでなく、「10代ぐらいの若い人に刺さらないサービスは、5年後、10年後には存在すら認知されなくなる」ということだろう。

もちろん、ユーザーそのものは10代ばかりではないのでそれでも構わないように思えるのだが、若い人が入ってこないサイトは急速に高齢化が進んでしまう。

そういった意味では、そもそもYouTubeは動画サイトの走りであり、老舗サイトに位置付けられるので、時代とともにうまく変革し、若い人を常に取り込んでいる企業努力が奏功していると言えるだろう。


 
振り返ると、ニコニコ動画ってかなりユニークなサイトだったな、と思う(むろん、まだ終わったわけではないが)。動画の画面上を、コメントが右から左に流れていくという仕様は画期的だったし、いろんな文化が生まれた。

いまでも、僕は例えばゲーム実況みたいなジャンルでは、画面に文字が流れるほうが合理的で楽しいのではないかと思っている。それだけではなく、ちょっとユーザーの感覚からすると疑問手に思えるようなUIも特徴的で、バージョンが変わるたびに「運営の改悪」などとユーザーからバッシングもよく飛び交っていた。

しかし、それも含めて、独特なカルチャーだったし、いろんなものが「生み出されて行った」のは確かだろう。しかし、そもそもの発祥も含めて、2ちゃんねるなどのアングラなところから派生して出てきたものではあるし、ちょっとインターネット黎明期から現代までの「つなぎ」のようなところに位置していたのは間違いない。
 
YouTubeのインターフェースは見やすいし、動画視聴に際してほとんどストレスを感じない。それどころか、各視聴者の関心を引く動画をどんどんYouTubeがおすすめしてきてくれるから、「ブーム」というものに乗っかる必要がないし、動画を投稿する人も、ランキングなどの「ウケ」だけを狙う必要がない。

ちゃんとおすすめされるようなクオリティのものを作れば、おすすめされるという仕組みアルゴリズムがあるからだ。しかし、そういった企業としては「真っ当なやり方」が、独特な企業文化を破壊した、ということだと僕は思っている。

もちろん、それは流れとしては当然あるべきものなので、それがだめだというつもりはない。


 
YouTubeは面白い動画が無数にあるので、日常的に見てはいるものの、オタク的でクリエイティブな土壌のあったニコニコ動画も良かったな、と思う。でも、時代は移り変わってしまったのだから、昔を懐かしんでも仕方がないのだけれど。

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