性格検査で性格は測れるか?

転職活動の一環で、「適性検査」なるものを受けてみた。はじめは、その用語が意味するところをよく理解しておらず、軽い性格診断みたいなものかな、と思って気軽にやってみようとしたのだが、実際は結構ガッツリとした「試験」だった。

ウェブ上で受けたので、実施場所は自宅だったのだけれど、いわゆる「SPI」などと呼称される就職試験だった。幸いなことに(?)その試験を要求してきたのはそんなに志望度の高い企業ではなかったからまだよかったものの、受けてみた結果としては、思っていた以上にボロボロだったと思う。
 
日本語の能力を問う試験は問題なかったのだが、数学の問題がヤバかった。もちろん、そんなに複雑な問題は出てこないから、冷静に時間をかければ解けるのだろうけど、いきなり初見の問題文が出て、制限時間があるなかで進めていくのはきつい。

まあ、本当に頭のいい人は、いきなり問題が出てきても即座に対応できるだろうから、言い訳にすぎないのだが……。
 
そんな数学の問題のあとで、やはり性格診断みたいなものがあった。「あまり深く考えずに、テンポよく回答していってください」みたいな但し書きがあって、自分の性格についてマークシート形式で答えていくものだった。

全部合わせると一時間近くかかったし、しかも終わっても結果は一切こちらに通知されないのでちょっといやな感じだった。試験問題のパートは、自分でもある程度成否の手応えがあるが、性格診断はどう返答すればいいのか全くもって不明だ。

こんな単純な問いかけで、「こいつはこういうやつだ」というふうに診断されるのはなんだか納得がいかない、という思いもある。


 
この手の試験は、どれぐらい蓋然性が高いんだろうか。なぜなら、自己評価とその人の実態というのは、しばしば解離するからだ。

今まで、自分の働いてきた会社で「社交的で営業がやりたい」という人を何人も見てきたが、残念ながらその中で本当に社交的で営業に向いている人はごくわずかしかいなかった。たいてい、よくそれで営業がやりたいなんて言えるな、と思えるほど口下手かつ非論理的で、そもそも人と接するのがそんなに好きそうではない人が多かったように思う。

なぜそういうことが起きるかというと、人と接することに苦手意識があると、それを克服しようとして努力をするので、その「努力」を認めて欲しくて、本来とは違った性格である、と表明してしまう、ということがあるようだ。

口下手な人は、人と話すことに苦手意識があるので、それを克服する努力を日々行っており、営業職という本来は向いていない仕事を志望するようになるのかもしれない。もちろん個人差はあると思うが、人間、誰しも自分の欠点を克服したい、と思って生きている人が多いように思う。

であれば、「自分」という性格がきちんと把握できている人はほんの一握りで、たいていの人は自己評価を誤るのではないだろうか。


 
もちろん、性格診断はそういう部分までお見通しで、「自分は慎重なほうだ」というものにマークを振ろうものなら、「こいつはおっちょこちょいだ」という結果が反映されるのかもしれないが。

いずれにしても、こういう画一的な試験で自分の性格が測られる、というのはあまり気分のいいものではない。単純なスクリーニングが目的だとしても、できれば実際に話してから判断して欲しいものだ、と思う。
 
就職活動で疲れるのは、なんといっても自分が「値踏み」され続けるからだろう。でも、やっぱり少なくとも今後しばらくの人生を左右するイベントであるのは間違いないので、あまり妥協せずにじっくり攻めていきたい、と思う。

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