noteはいつまで続くのか?

noteが12月21日に東証グロース市場に上場する承認を得られたということで、一部でやや話題になっている。

この手のウェブメディアはあまり上場しないものだと思っていたのだけれど、上場するんだな、というのが率直な驚き。しかし、いまもっぱら話題になっているのは、上場するにあたっての評価がかなり低い、という部分のようだ。

5月の資金調達後に確認されたプレ IPO ラウンドの時価総額337.9億円から、大幅にディスカウントした上場を決めたようだ。足元では経営が赤字というのも響いているのかもしれない。

これに対しては、機を逸したともとれるし、とりあえずエグジットしたいから上場する、という経営判断ともとれる。いずれにしても、評価額が非常に低いということで、投資クラスタはざわついている、のが現状のようだ。

自分としては、評価額が低いのもさることながら、売り上げがたったの18億円しかない、というのが衝撃だった。会員数が500万人以上もいて、月間アクティブユーザーもそれなりにいるサービスでも、売り上げにしたらそんなもんなんだな、というのが率直な感想である。

しかし、考えてみれば、いくら名が知れているとはいってもTwitterやLINEみたいな「インフラ」とも言えるような規模のものと比較するとマイナーではあるし、そもそも広告を軸にしていないビジネスモデルなので、そんなものなのかもしれない。

とはいえ、社員が170名ちょっといて、売り上げが18億となると、かなり規模は小さいと言わざるをえない。しかし、自分もいまのところ無課金ユーザーで、ほとんどお金を落としていないのでなんともいえないのだが……。

ここにきて、note運営側のこれまでの炎上などの「コンプライアンス意識」にも再度注目が集まっているようだ。あんまり自分はこの手の炎上騒ぎみたいなのに明るくないので、細かい経緯はわからないのだけれど、noteがもうひとつの柱事業として展開していた、「Cakes」というメディアで、差別的な表現を容認していた、的なところが炎上の発端になっているようだ。

たまに話題にはなっていたが、自分にはあまり縁のないところで起きていたので、あまりウォッチしていなかった。

しかし、それよりも一番個人的に気になったのは、その「Cakes」そのものが突然サービスを終了してしまった、という事実だろう。

差別的なコンテンツは、プラットフォーム運営側であるnoteにも責任の一端はあるかもしれないが、もともとその記事を書いた著者がいるはずで、そちらのほうに責があるとする整理なのであればまだ理解できる。

しかし、記事としてアップされている大元のサービスそのものがまるごとなくなってしまうというのは、書き手にとっては「それまでに書き溜めたもの」がまるごとなくなってしまうことになるので、会社としての信頼性うんぬんの話であれば、まずこちらが俎上にあがるのでは、というのが私見である。

もちろん僕はCakesに寄稿したことがあるわけでもないので、何も関係がないと言えばないのだが、しかし突然消滅してしまった事実は衝撃的ではあった。

Cakesが消滅したのだから、noteだって消滅しないとは限らない。そうなったときに必要なのが「ブログの引っ越し」であり、エクスポート機能になるだろう。せっかく書き溜めた記事がまるごと消えてしまうリスクが常にあるのは、厳しい事実ではある。

過去記事を自分自身が必要とするかというとまた微妙ではあるが、一応、自分で書いてきた「資産」のような位置付けである。10年以上前、yahooブログを利用していたのだが、サービス終了するというアナウンスがあったようで、いつの間にかサービス終了してしまい、データが全部消えてしまっていた、という前例もある。

ネット上の膨大な営みとかも、公共の図書館などに貯蔵されているわけではないので、運営元の胸ひとつで消えてしまう、という事実を再確認したのである。

とはいえ、note運営を批判するつもりはない。noteは別に公共の団体ではなく、営利企業にすぎないのだから、サービスそのものをどうしようが、それは経営側の判断である。

運営の肩を持つわけではないが、「嫌なら使うな」の精神である。プラットフォーム提供者が負うべき責任というのはもちろんあるだろうが、利用者が莫大なサーバー費用・維持費用などのコストを負担しているかというとそういうわけではない。

仮にnoteが終了したとしたら、これまでありがとうございました、という気持ちではある。極端な話、そういうのがいやなのであれば、自分でサーバーを用意してhtmlでホームページをやってください、という話になってしまう。

とはいえ、それで飯を食っている人たちにとっては死活問題というのは理解できる。でもTwitterも赤字だし、そういうものだといえばそういうものかもしれない。ネット企業なんて、一番長いものでも30年も経っていないわけで、今後どうなるかなんて誰にもわからない。

いま、こうしたネット企業のデータセンターの電気代が莫大にかかっていて、その維持コストが非常に大変だ、というのはよく聞く。「自分で紙に印刷して配る」というのでは到底届かない、何百万人という人に対して、タダでアクセスできる環境を作ってくれているのだから、ありがたい話ではあるのだろう。

実際、note以外で文章を書いていても、そこまで読まれる気配はないので、ありがたいとは思っている。

とはいえ、上場してしまうと、そういった「事業のコア」みたいなところをグリップする力がなくなってしまうような気もするので、もしかしたらnote閉鎖、みたいな将来も可能性が少しは上がるかもしれない。できれば長く続いてほしいとは思うけれど。

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