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だんだんストイックになる

普段はスポーツ観戦をしないのだが、先日、プロボクサーの井上尚弥の試合を見た。

プロボクシング業界のプロ4団体のうち、バンタム級において井上は既に3団体のチャンピオンだったが、残る1つのベルトをもつポール・バトラーとベルトをかけての試合だったらしい。

テレビなどで事前にかなり宣伝され、話題になっていたということもあるが、それ以前に井上尚弥の存在は認知しており、過去の試合の動画なども見ていたので、結構楽しみにしていた。

当日は、独占放送しているというdTVをiPadに入れて、Chromecastでテレビに接続しながら観戦した。自分がスポーツ観戦するのはきわめてレアなので、奥さんが珍しがっていた。

事前予想では圧倒的に井上有利とされていたのだが、それでも世界統一戦という大舞台である。しかし、下馬評通りの試合ぶりで、井上の圧勝に終わった。

はじまるまではどういう展開になるのかドキドキしていたが、井上はステップで相手の攻撃をいなすスタイルのバトラーを終始圧倒し、11ラウンドでKOした。ただ、井上の試合はチャンピオンクラスの相手であっても1•2ラウンドでKO勝ちしてしまう試合が多いので、バトラーのタフさと、防御力・攻撃回避力の高さが際立っている試合ではあった。

後日、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも井上尚弥が特集されていたので、それも見た。ストイックにボクシングに取り組む様がフォーカスされていたが、本当にストイックなんだなと思う。

所属ジムの大橋会長によって「モンスター」という異名がとられているが、本人は極めて紳士的で、爽やかである。というより、ボクシング=不良のイメージが、もはや古いイメージなのかな、と思う。チャンピオンはどこまでいってもストイックだし、ボクシングのことしか考えてないように見えるからだ。

普段の練習風景を見ていると、当たり前だが、観客はいない。もくもくと己を追い込んでいくボクサーがいるだけである。合宿で、過酷なトレーニングを積んでいる時も、観客はいない。

デビュー10年で、公式戦24戦だというから、年3試合もない、ということになる。あとの時間は、牙を磨いている時間なのだろう。世界的に有名になって、ちやほやされたい、という感じにももちろん見えない。

どんな業界でも、業界のレベルが上がっていくとそうなるものなのかもしれない。最近注目している将棋界でも、トップ棋士はみなストイックである。

昭和の棋士の逸話を見ると、基本的にみんなギャンブル好きであり、破天荒だが、だんだんと洗練されていくと、そういうことだけでは通用しなくなっていくということだろうか。

競技自体が「アスリート」を求めるようになると、自然とそうなっていくのだろう。

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