おカネを払う側が「神様」か?

仕事でとある業務を外注しているのだが、その外注先の会社がやらかしまくっていて、連日火消しに追われている。もちろん自分だけじゃなく、自分の周囲の社員含めて全員がかなり大変なことになっているのだが、えらいことになったなあ、と困っている。

普通に日常生活を送っている中で、たとえばお店でお金を払って消費者としてのサービスを受けることは当たり前だと感じる。吉野家に行って牛丼を頼んだら、ちゃんと牛丼が出てくることを当然のように期待する。

もしそこに髪の毛が入っていたり、豚丼が出てきたりしたら、即座にクレームを入れて正しいものに交換してもらうだろう。言うまでもなく当たり前のことだが。

しかしBtoBのビジネスの場合だと、違うこともある。ちゃんと金を払っているのに、期待していたものが出てこない場合があるのだ。

そうなるとどうなるかというと、もちろん揉める。とにかく揉める。この部分の金は払わないとか、賠償しろとか、そういうことにどうしてもなる。特に、個人同士のやりとりではなく会社同士のやりとりなので、「まあ、そのぐらいの金額だったらいいか」と妥協するのも難しい。だから揉める。金を払う側も、受け取る側も、起きた事件の対応をする必要があるし、落とし所を見つける必要もあり、とにかく消耗するのだ。

一般消費者として気に入らない店があったら、「もう行かない」という選択ができるだろう。一度いやな思いをした店にあえて行く必要はない。

しかし、BtoBビジネスの場合、ここでまた究極の選択を迫られることになる。

(1)心機一転、新しい会社に発注しなおす……
新しい会社がちゃんと仕事をしてくれるかわからないし、不慣れなので、また失敗する可能性がある
(2)失敗した会社に継続して発注する……
一度やらかしているのでかなり不安。だが、修羅場はくぐっている

どっちに転んでも地獄、ということになりやすい。でも、どちらかというと応急処置的には2の選択肢をとることが多いのではないか、と思う。2を選択しつつ、折を見て1の会社を虎視眈々と探し続ける……みたいな。

昔話をすると、5年以上前は、物流会社でトラック手配の管理者をやっていたのだけれど、こういう「事件」というか「揉め事」が頻繁に起こった。

明日までにトラックを3台発注しなければならないのだけど、どの会社に電話しても断られる。仕方ないから、付き合いの深い会社に電話して、無理矢理やってもらう。

しかし、無理やり頼んだのでドライバーが無茶なスケジュールで寝坊してしまい、結果的に大クレームになる。そこでトラック会社の社長を呼び出して説明させると、「無茶な条件で発注してくるそちらが悪い」と開き直られる……と。

まあ、業界自体に余裕がなかったので、そういうことになるのかもしれないが……。こちらも無茶を言って頼んでいる以上、あまり強くは出れないし、関係が悪化するとさらに普段の仕事が捌けなくなる、という非常に繊細なバランスの上で成り立っている。

いまの仕事はそこまで逼迫しているわけではないが、規模的に発注できる先が限られるので、そういうことになりやすい。

「お金を払えば、最高のサービスが当たり前に受けられ、万事解決」みたいな世界とは別の世界もある、というのは社会にでたら勉強になった。

また、「失敗しても即座に切られるわけではない」というのもある。結局、「金を払う側」「金を受け取る側」というのは、需給のパワーバランスで成り立っているのであって、どちらが上ということはないのだ。

交渉上手な人は、そういうバランスの計算がうまいのだろう。

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