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「夢」の機能はなんですか?

「将来的な願望」のことではなく、夜寝るときに見る「夢」は、誰しもが見た経験はあるかと思われる。それだけ身近な「夢」なのに、その正体がなんなのか、ちゃんと説明しているものは少ない。

これまでにいろいろな脳科学の本などを読んできたのだけれど、満足のいく説明を見たことがない。よく、夢の役割として「記憶を整理している」と言われることがあるが、本当にそうなのだろうか。そもそも、夢じゃないと記憶は整理できないのだろうか。

なにより、たかが記憶の整理のために7時間もかける必要はあるのか、と疑問も生まれてくる。1時間ぐらいでなんとかならないのか、ということである。

夢にまつわる自分の体験で、非常に印象的なものがある。以前勤めていた会社で、僕はトラックの手配の責任者をしていた。物流センターの管理職で、それなりに大きなセンターだったので、日々いろんなトラブルが発生して、かなり大変な職場だった。

ある日、手配するべき臨時のトラックがなかなかつかまらず、知っている運送会社に片っ端から電話をしていた。そこで、ある運送会社の社長が、「いまから確認するが、確認がとれたら連絡する。たぶん、二時ごろになる」という連絡がきた。ちなみに、二時というのは午後ではなく、午前のことである。

なので、僕はいったん就寝したのだが、予告通りに二時に電話が鳴り、そのときは「手配できた」という連絡を受けた。しかし、夢の中で「手配できなかった」という夢を見たので、朝になって、本当に手配できてるんだろうか、と心配になった。

結局、起きてから手配できたのかできなかったのかを確認するために電話したところ、「手配できなかった」が正解で、夢と現実が逆になっていた、という珍事件が起きた。なので、夢と現実の違いって意外と脳の中では区別がついていないのではないだろうか、というのが仮説としてある。

もちろん空を飛んだとか、現実に存在しない場所に行った、みたいな夢は「夢・妄想」として処理されるのだろうが、もっと細かいところは、自分に都合のいいように現実の記憶をねじ曲げているのではないだろうか、ということだ。

子どもはよくイマジナリーフレンドと言って、存在しない友人の存在を示唆したりすることがあるというが、この「夢」も原因のひとつなのではないだろうか。

夢は「記憶を整理している」と説明されるが、そのわりには現実の再現リプレイではなく、現実には存在しない風景を見たりする。よくよく考えてみると、「こういう夢を見たのは、ああいうことを考えていたからかな」みたいな「元ネタ」を思いつくことはあるが、それにしてもデタラメな夢をみる。

ああいう現象は「記憶の整理」だけでは説明がつかない。もし、小さい子どもで、「夢と現実の区別がまだあまりついていない」状態であれば、夢で見たことを本当の体験として話したとしても不思議ではない。

大人になれば、あまりにも荒唐無稽な記憶は「夢だな」と処理できたりするのだろうが、小さい子どもには、まだそういう処理はできないのではないだろうか。それで、夢と現実を混同してしまうのだ。

ある種の本能というか、妄想力というのか。もしかすると、夢というのは、「自分に都合のいい記憶を作るための防衛機能」なのでは、と思うこともある。

夢の日記をつけると狂う、という話も聞いたことがある。それは、夢を記録をつけることによって、夢のことが現実のことと混同してしまい、記憶の改ざんがより顕著になるからではないだろうか。

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