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転職活動の負けパターン(と思われるもの)

奥さんの会社の同僚が、会社を辞めて転職しようと思ったものの、これまで積んできたキャリアが不十分であまり良い転職先が見つかりそうになく、何か資格を取ろうとしている、という話を聞いた。

それを聞いた瞬間に、「あっ、それ負けパターンや!」と思った。少なくとも自分の知る範囲では、その方向性でうまくいった人を見たためしがない。そういえば以前もこの内容でnoteを書いたことがあったなと思って探してみると、確かにあった。

以前書いた記事にも記載してあるが、僕が昔勤めていた会社の物流倉庫では、仕事がしんどくなってくると、医療事務の資格を取って辞める女性社員が頻発していた。

大卒の子だともうちょっとバリエーションがあるが、高卒の子だと、判で押したようにそのパターンだった。当時は医療事務という資格にぴんとこなかったのだが、デスクワークであまり仕事もきつくない、ということだった。

しかし現実はそう甘くはなく、医療事務の仕事も結構飽和しているという話だったし、仮になれたとしてもそれほど楽な仕事ではないらしい。まあ、その発想に至る人が多いので、確実にレッドオーシャンといっても間違いではないだろう。

この発想のどこらへんの「スジが悪いか」というと、「とりあえず食べていける資格を取ろう」みたいな発想からスタートしている点だろう。もちろん、いきなり生活保護を申請しようとか、親の脛をかじろうというわけではないので、ある意味では勤勉だし、そこまで高収入を期待していないという点では慎ましくもあるのだが、ある意味では考え方がワンパターンで、思考放棄している分、厳しい見方をすれば、怠惰とも取れる。

確かに、「何とか食べていければいい」というぐらいの意欲だということで否定はしないのだが、特定の資格を取ることによって選択肢が縛られてしまい、かえって自由を狭め、生きづらくなる側面もあるのではないだろうか。

何か資格を取ってから仕事を探すのではなく、やりたい仕事を探したうえでこの資格が必要というのが判明する、という方が順番としては良いような気がする。一般的には、簿記の資格等がとりあえず取る資格としてメジャーなような気がするが、それが生かせる仕事、となるとかなり限られてくるだろう。

何か適切な例えはないかと考えてみたのだが、資格というのは「登山用具」に例えられると思う。登山をするためには当然登山用具が必要となるが、資格を取っただけの状態は、まだ登山用具を買っただけの状態だと言えるだろう。それでは、もちろんエキスパートとは言えない。

だから、多くの場合は資格を持っているだけでは不十分で、資格があるのは前提として、実務経験がどれだけあるかが問われる。まあ、それは当然だろう。本当に登山がしたい人は、まずは高度な登山用具がなしでも登れる山から始めていき、だんだんと高度な道具を揃えていってステップアップしていくのが筋だと思う。

まだ山に登ったこともないのに、いきなり高度な道具を扱うアルピニストになろうというのは、かなり不自然な発想である。もちろん、医者や弁護士などの職業は、まだそういった仕事をしたこともない状態で長年の高度な勉強をこなしていかなければならないのだから、それ自体を否定するわけではないが、順番があべこべのような気がするのである。

とはいえ、僕も3年ほど前に転職活動をしたので気持ちはわかる。多くの場合、思ったよりも書類が通らないため、困惑することになる。なので、僕は膨大な量の求人をチェックした。それこそ本当に仕事をするのと同じぐらいの時間、毎日8時間ほどかけて求人をチェックする作業をこなした。

自分が個人的に興味があること、できること、キャリアの連続性があることなど、いろんな軸があるので、それに当てはめたときにその求人はどの程度自分にとって魅力的かというのを一つ一つ検討していった。

その結果、今の会社に就職することになるわけだが、膨大に検討したその作業自体は無駄ではなかったと思う。

「とりあえず働ければそれでいい」と思う人は、あまり自分が興味がある仕事がしたい、みたいな熱意がないのかもしれない。であれば、コスパの良い仕事、短時間でたくさん稼げる仕事を探すという軸が見つかるわけで、そういう風に見たほうがトータルでは得するのではないかと思う。

とりあえず資格を取ろう、みたいな発想は非常に危険だ。思考停止しているからである。また、同じことを考えている人が大勢いるため、意外と茨の道だ。多くの人が思いつかないこと、実行しないことをを実行することによって、逆に自分の人生を有利に進められるのだろう。

あとこれはつくづく思うのだが、自分の人生は一回だけだし、自分自身は一人しかいないので、「よい選択肢をたくさんもつ」必要はそもそもないということだ。例え1000社面接を受けて、そのうちの1社しか内定が出なかったとしても、その1社で本当に納得のいく仕事があれば、全然それで構わないのではないか。

自分がやってみたいと思う仕事で資格が必要だとしたらそれに向けて勉強すればいいし、未経験でも採用してくれる会社があるならば、まずはそこからでも良いのではないだろうか。考えること、選ぶことを怠らないのが大事だと思う。

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