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無職のおわり

無職の期間が終わり、ふたたび働きはじめた。

もちろんいつかは終わる無職期間だったのだけれど、いざ終わってみるとなかなか呆気ないものだった。そんな期間ははじめからなかったかのように、また新しい生活が回り始めた。
 
転職先を決めてから辞める、という選択肢ももちろんあったのだけれど、諸事情があって、実質的に自分には無いに等しかった。先にやめてから転職先を探す、というのはわかってはいたものの、なかなかスリルがあった。

なかなか仕事が決まらないんじゃないか、という緊張感ももちろんあったけれど、一番懸念していたのは、そもそも仕事がないんじゃないか、ということだった。これだけコロナで業績が傾いている会社が多い一方で、求職者の数も多いのだから、椅子の数が減っているのに人の数は多い、という状況になるわけで、それは過酷な転職活動になるのではないか、と思った。

結局、運がよくて、活動をはじめてから二ヶ月ほどでいい会社の内定を得ることができたわけだけれど、このチャンスを逃したら次はいついいものに巡り合えるかわからない。そういう状況だった。


 
新卒で社会人になってから、だいたい2年ぐらいの周期で配置換えをしていたのだけれど、4年前に転職をしてからは、ベンチャー企業だったということもあり、同じ場所にずっと勤務していた。

もちろん、職責は上がっていったのだけれど、同じ場所にずっと通い続けるとだんだん刺激が少なくなっていく。いろんな意味で「慣れて」いってしまうというか、昨日までの延長で仕事をしてしまっているような感覚になる。

たまにこうやって転職をすると、そういう感覚がまるごとリセットされるようで、それは新鮮で楽しいな、と思った。
 
考えてみたら、ちゃんとした上司のもとで働くのは久しぶりだ。前職も、その前の仕事も、基本的に上司のいない環境だった。もちろん、上長は存在はしたのだが、社長直下のプロジェクトみたいなのも多かったので、小さなチームを自分でまとめていくのがこれまでの仕事だったのだ。

新しい会社では、もちろんこれまでの経歴なども買われてはいるのだけれど、チームメンバーの一員になった、という感覚で、自分としてはずっと新鮮なような感じ。しかも、周囲の人たちもとても優秀そうな人たちなので、これからが楽しみだ。


 
若いうちは転職も楽しいけれど、ある程度の年齢をいくと、なかなかそうも言っていられないだろう。なるべくなら刺激の多い環境を維持したいけれど、末長く働けるようにしたい。
 
当たり前だけれど、転職活動は内定が出たら終わり、ではなく、これからがはじまりなのだ。がんばろう。

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