「選べる」だけで、ちょっと豊かな社会

転職した会社ではテレワークが主流だ。というか、全社的にほぼ出社禁止ぐらいの勢いでテレワークが推奨されており、会社に出社するほうがイレギュラ扱いになっている。そのルールはこの会社に転職してきて間もないメンバーにおいても例外ではなく、僕はまだ転職してから数回しか出社していない。
 
最初、ここまでテレワーク比率が高いのはさすがにどうなんだろうと思っていたが、慣れてくると、かなり快適に感じている。むしろ、週5で出勤するのはあまりにも負担が大きいし、非効率だとさえ思う。コロナの影響を抜きにして考えたら、半分出勤、半分在宅、ぐらいが理想なのではないだろうか。
 
仕事で外部の人と話すときはメールと電話がメインだし、社内の打ち合わせや連絡などはチャットツールを使っている。これも使い慣れると本当に便利で、関係者を複数入れたグループチャットみたいなのも一瞬でできるので、むしろ会社にいるよりも、部署や空間を超えた情報共有が気軽にできているのではないかと思う。

今月に入ってから、少しだけ規則が緩和され、週に一度ぐらいは会社に行けるようになった。出社すると、自分の会社なのに落ち着かない気分だったが、人は少ないのでそこそこ集中して仕事をすることができた。チームのメンバーとも週一ぐらいでしか会わないが、なんだかオフ会のような感じで、それはそれで新鮮だ。
 
コロナは新しい働き方を促進したと言われるが、まさにその通りだと思う。技術的には可能だったけれど、無理に推進させるメリットが少ないので、テレワークをするための環境整備が後回しになっていたのが、急速に整備された。もちろん、出社しないとできない仕事や職種もあるが、会社に行かないでもできる仕事もたくさんあるのだから、「使い分け」ができるようになっただけでも儲けものだろう。単純にこの状況を喜ぶのは不謹慎だが、とにかく仕事に集中できるので、個人的には大歓迎である。
 
一番割を食っているのは管理職かもしれない。自分がプレイヤーとして仕事をする分には非常に効率的で都合がいいのだが、テレワークで部下を管理するというのは相当難しい、と想像する。また、仕事の基本を身につけていない未熟な人がテレワークをしても、そもそも仕事の進め方がわからない、ということもあるだろう(実際に、そういう問題は起きているようだ)。

そもそも基礎ができていない人に対して、チャットでキャッチアップするにも限界があるから、「自分で仕事を設計する」能力のない人にはこの状況は結構つらいのかな、と。だから、むしろ実力の差が広がりやすい環境、と言い換えてもいいかもしれない。


 
とにかくいまの仕事環境でありがたいなと思うのは、外線をとったり、来客対応をする必要がないところだ。一時間、二時間といった時間、誰にも邪魔されずに仕事をする環境が整っている。もっとも、これは会社の規模がある程度大きいから、というのと、外部とのやりとりをする窓口があるから、というのもあるかもしれないが。テレワークによって、さらにその集中できる度合いが高まったように思う。
 
テレワーク否定派もけっこういるけれど、自分にとっては非常に合っている働き方なので、是非とも続いてほしいと、思っている。

本当はルール違反らしいのだが、社内には、個人でコワークスペースなどを借りて、勝手にサテライトオフィスみたいにしている人もいるらしい。そういう選択肢もありといえばありだし、出社しない日は田舎に古民家でも借りてそこで仕事をする、という選択肢もありだろう。

「選べる」というオプションがあるだけでも、ちょっと豊かな社会になったのかな、と思う。

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