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お金持ちはどうやってお金持ちになったのか?

仕事柄、海外へ販路を伸ばしたいメーカーの人などとよく話をした。

中国や東南アジアに進出したいと考える人たちは、進出にあたって、だいたい似たようなことを話していた。

「うちの製品は、現地では高級品になると思うんですけど、富裕層をターゲットにしようと思っています」と。
 
日本で普通に売っているものを、東南アジアで売ろうとすると、現地の人にとっては高額すぎるので、普通の人には売れない。だから、富裕層をターゲットにする。

その発想自体は悪いわけではないのだが、それはそれでハードルが高い。なぜなら、湯水のように金を使う成金みたいな富裕層もいるにはいるが、富裕層というのは「なるべくして」富豪になった人が多いからだ。
 
世界一の大富豪は誰か。僕の中では長いこと「ビル・ゲイツ」がその筆頭だという認識だったのだけれど、いまは彼は世界第二位の富豪である。彼に代わって一位に躍り出たのが、AmazonのCEOであるジェフ・ベゾスだ。

Amazonの経営の裏側について切り込んだ書籍を読んだ。

もちろん、この手の「暴露本」というのは、はじめから裏側を暴くぞ、という意図で書かれているので、すべてを鵜呑みにするのは危険で、話半分に読む必要があるのだが、それにしても事実だけを洗い出すだけで彼の「えげつない」経営手法が浮き彫りになる。

作中で「アングロサクソン流の経営」と称されているのだが、とにかく商売相手にマウントをとり、こちらが優位な状況になってから締め上げる。Amazonなしでは商売が成り立たないようにしておいてから、相手を限界ギリギリまで絞る。Amazonの配送において、ヤマト運輸や佐川急便が苦労しているのは周知の通りだろう。

そういった配送業者のみならず、Amazonに関連する企業は、その横暴さにどこも苦労しているようだ。もちろん、そのおかげであの便利なサービスが成立している、という側面もあるのだけれど。
 
僕の印象では、金持ちほどケチだ、と思う。無駄なことに金を使わない。

会社の社長が高級車を乗り回しているのも、突き詰めると税金対策だろうし、いざとなれば売り飛ばすわけだから、そのつもりで買っている。一方で、従業員に払う給料や、税金はいくら支払ってもそれ自体が資産になるわけではないから、限界ギリギリまで少なく済ませようとする。
 
Amazonの倉庫での労働はキツいとされているが、肉体的な労働でいうと、もっとキツい職場はあるのではないか、と思う。

一番キツいのは、労働者の仕事内容が単純労働に終始しており、考える余地もなければ、昇進する余地もない、ということだろう。いまは「安い労働力だから」使っているが、そのうち機械が代替するようになれば、あっという間に首を切られてしまうに違いない。

金持ちの考えることというのは、そういう「えげつない」ものなのだ。

少なくとも中国の富豪に高級品を売るためには、それがなんらかのステータスにならなければならない。たとえば世界的に有名なブランド品とかだったら、喜んで買うだろう。それを買うことで、周囲に自慢できるからだ。

しかし、ただ単に性能がいいだけの高級品なら、見向きもされないだろう。もっと安く、もっと性能がいいものを「魅力的だ」と感じるはずだからだ。
 
より合理的に、より安く、ライバルより強力なものを。お金持ちの頭の中というのは、こうなっている。貧乏人に高級品を売りつけるほうがまだ簡単なのでは、とすら思う。

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