戦略と作戦の違いを説明できますか?

本来は純粋な軍事用語だったはずだが、ビジネスの世界で用いられるようになったので、日常的な用語として「戦略」「作戦」「戦術」という言葉を聞くことがある。

この中で、最もよく用いられるのが「戦略」かもしれない。しかし、同時によく言われるのが、一般的な職場で「戦略」と言われているものの多くは、戦略ではないということだ。これらの言葉の違いについて少し考えてみたい。


 
「戦略」の辞書を引いてみると、非常に明快な回答が得られる。デジタル大辞林によれば、「戦争に勝つための総合的・長期的な計略。」となるそうだ。これだと簡潔すぎてちょっとわかりづらい。

「総合的・長期的な計略」ということは、戦略というのはめったに動かさない、ということになるだろう。逆に言うと、長期的な計画に影響を与えるぐらい大きな選択、と言えるかもしれない。

戦争でいえば、そもそも戦いを起こすかどうか、起こすならどういう戦いか、それによってどういう成果を得るかを考えること、になるだろう。

作戦はそれよりもっと具体的で、戦略によって「戦いが起こる」ことが決まったとき、どうすれば戦果が最大化されるかを考えることだ。戦術は、作戦を遂行するうえでの具体的なやり方なので、鉄砲の打ち方とか、そういう具体的な物事を指すのだろう。
 
戦術というのは具体的なので、言うなれば、個々のオペレーションの項目のようなものだろう。たとえば、飲食店であれば、マニュアルに書かれた内容などが該当する。

「作戦」は、店の売り上げを上げるための方策そのもの。マニュアルを作成して徹底させることは、作戦を組み立てるうちの数々の戦術のひとつにすぎない。そもそも、「マニュアルに書かれていることをちゃんとやらせること」も作戦を構成する戦術のうちに含まれる(そして、これがなかなか大変だったりする)。

戦略は、そもそもどこに出店するか、なんの店を出すか、を決めることを含む。店というのは、いったん出すことを決めて出してしまったら、失敗だとわかってもそう簡単に畳むわけにはいかないので、検討は慎重にしなければならない。

一般的なサラリーマンだと、せいぜい考えるのは「作戦」レベルだろう。その事業をそもそもやるかどうか、というのは経営陣が判断することで、社員が考えることではない。しかし、いつか出世して、経営判断を任されるようになると、この「戦略策定」に従事するようになる。


 
ビジネスとして考えると堅苦しいけれど、これは個人個人の人生レベルで考えても、この切り分け方は有効であるように思う。

ふだん、普通に生活している分には、日々の生活をよりよくすることだけを考えていけばいいが、たまに「戦略的な思考」が必要となる場面が訪れる。転職するかしないか。するならどこにするか。結婚するかしないか。するならどんな人とするか。

戦略というのは、基本的に無傷では引き返すことができない。作戦や戦術は、今日の失敗を明日に生かすことができる。
 
なので、戦略というのは基本的にはあまり外部には漏らさない。少なくとも企業の活動においてはそうだ。何をして、何をしないかを長期的に明確にするのが戦略、ということになる。コロコロ変えるものではなく、影響範囲が大きいので、なおさら他人には知られたくないものなのかもしれない。

サポート費用は、小説 エッセイの資料代に充てます。