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何度めかの、美容室難民

何年か切ってもらっていた美容師が、通っていた美容室から少し遠い美容室に移ることになった。

もともと、自宅からそこまで遠くないところにある美容室だったのだが、自分が引っ越しをしてそもそも遠くなり、美容師さん自身も遠い職場に行ってしまうということで、さすがに通い続けるのが困難になった。

移転先のお店に行っても良いのだけれど、シンプルに遠いし、移転先の美容室の雰囲気が自分の好みではなさそうだったので、ここらへんで切り替えるべきかな、と思った次第である。

おそらく、担当してもらっていた期間は2〜3年ほどだろうか。たぶん、客観的に見てめちゃくちゃ技術がある、という人ではなかったような気がするのだが、かなり記憶力のある人だった。

美容室に通うのなんて2〜3ヶ月おきぐらいなのに、前回どういうふうにカットしたか、というのをちゃんと覚えていて、会話の内容も覚えている。結構気が合う人だったので、残念である。

今まで、何人かの美容師に髪を切ってもらったのだが、僕が美容師に求めるものとして「抽象的なオーダー」がある。はじめての美容師では、当然こちらの好みがよくわからないので、けっこう細部まで確認されることもあるのだが、信頼できる美容師であれば、基本的な好みは把握していることを前提に、抽象的にオーダーすることになる。

細部まで自分が指示してもいいのだが、自分主体のオーダーだといつも似たような注文になってしまうし、そもそもどういったものが似合うのかといったことはなかなかわからない。どういうのが似合うのか、まで提案するのがプロでは? とも思っている。

しかし、さすがに初見で好みまではわからないので、何度か切ってもらい、傾向を把握してもらう、というのが重要な気がしている。これまで担当してもらっていた美容師さんは、そのあたりもバッチリで、「なんとなく、夏っぽく」みたいなオーダーでも難なくこなしてくれる。それだけに、かなり残念である。

美容師はなんとかなったとしても、好きな雰囲気の美容室というのがこれまた、難しい。いろんな美容室に行ってみたものの、「ここの美容室は雰囲気が合う」というようなところにはまだ出会ったことがない。

美容室はコンビニよりもたくさんあると言われ、確かにやたらとたくさんあるのだが、どれも雰囲気が似通っているな、と感じる。もっと多様性があってもいいように思うのだが……。

そして、そのデフォルトの雰囲気があまり合わないので、つまり、満足のいく雰囲気の美容室が全然ない、という結果につながっている。

自分は、髪型にはあまりこだわりはないし、流行を追いかけたいという欲求も一切ないのだが、あまり短い髪にはしたくないので、床屋にいくのはちょっと……、というタイプである。こういう層がどれほどいるのかわからないけれど、なんとなく「うまく取れていないニーズ」のような気がしている。

美容師は「AIに代替されない仕事」の中に入っているのだろうか。究極のところ、ペッパーくんみたいなロボットが切ってくれる、というのであれば、それはそれで悪くないような気がしている。変に気を遣うこともないし。

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