ソフト的解決

一般的にはどのぐらい知名度があるのかは知らないが、ラクスルという印刷サービスがある。

印刷のことなら格安・激安の印刷通販【ラクスル】 

たまにフライヤーというか、チラシみたいなものを印刷することがあるので利用しているのだが、他の印刷サービスと比較すると格段に使い勝手がいい。PDFで入稿できるし、料金体系もわかりやすい。

印刷する仕様や枚数などを設定すると、すぐに入稿ができる。しかも、仕上がりの状態までシミュレーションできる機能があったりして、完成品のミスマッチも少ない。

それまでも、印刷会社に印刷物の入稿などをしたことはあったのだけれど、そもそもPDFで入稿ができなかったり、営業の人から確認の電話がかかってきたりして、なかなか煩わしかった。だから、ラクスルのネットの画面上で完結する上に、安くて早いサービスに満足していたのだ。
 
使い始めた頃はどういう仕組みでこのサービスが成り立っているのか知らず、ただ単に便利なサービスだなぐらいにしか思っていなかったのだけれど、あるとき、ラクスルの代表のインタビューを読んで、そのビジネスモデルの全容が見えた。

ラクスルは自社ですごい印刷機を持っているわけではなく、全国の印刷会社に印刷を外注しているのだそうだ。印刷機が動いていない時間を利用して印刷する仕組みを作った、というのだ。印刷というのは、印刷そのものにかかるコストより、どちらかというと印刷機の固定費の比重が高いので、印刷機の稼働率をあげることがポイントになるのだけれど、日本の印刷機の稼働率は40%ほどで、伸びしろがあったのだという。

そして、最初は印刷会社の比較サイトからスタートしたものの、途中から舵を切り直して、いまのようなサービスを構築するに至った、と。


 
新しくビジネスを立ち上げるにあたって、こういうソリューションはスマートだと思う。どうしても、「印刷事業をやる」となったら、金を集めて、すごい機械を導入して、プロモーションを打ちまくって事業拡大する、というモデルをイメージしがちだ。

しかし、自社ではモノを持たず、「すでにあるもの」を活用して、ソリューションを提供する。そこで必要になるのは、ハードウェア的な解決策、というよりは、ソフト的な解決策だ。

しかし、便利なサービスだと感じる裏側では、旧態然とした印刷会社との、びっくりするほど地道でアナログ的なやりとりがあっただろう。しかし、そういったことを積み重ねていって、いまのサービスを実現したのだ。
 
ユーザももちろんハッピーだし、印刷会社もハッピーになれる。つまり、全員が得をするソリューションになるわけで、こういう仕組みが実現できたら楽しいよな、と思う。

「とにかく金を儲ける」とか「業界で一番になる」ということを考えるのではなくて、仕組みを変えて、みんながハッピーになれるにはどうやったらいいか、ということを考え、実際に行動に移すことによって、結果的に儲かり、業界でも一番になれる、というのがスマートだと思う。


 
何かサービスを立ち上げるときには、こういう発想でありたいですね。でも、これが「楽だ」と言っているわけではなくて、おそらく自前で印刷機をもつほうが事業そのものはやりやすいのだろうけれど、こうやって地道な作業を経て、ひとつの価値を作り上げるところが素晴らしいな、と。

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