見出し画像

イワシとインターネット

岡田斗司夫が、「現代人はイワシ化している」という主旨の動画を出していた。

詳しくは動画を見ればわかるけれど、ネットのちょっとした情報に飛び付き、秒で見たものを秒でシェアする現代人は「脳が小さいイワシの群れと同じ」ということで、そんなことをしているとどんどん知能指数が下がっていく、ということらしい。相変わらず、概念を言語化するのがうまい。

現代人は忙しく、コンテンツを消費する時間がない、とよく言われる。いろんなところでこの文脈を見るので、ほぼ共通認識の一般常識とみていいだろう。

昔の人はじっと本を読んでいたものだが、それがだんだんネット記事を読むことに取って代わり、その次はツイッターになり、TikTokになっている。動画配信サイトのYouTubeですら、長ったらしいので見ていられない、という人が増えているらしい。
 
しかし、このように「現代人は忙しい」というが、それは本当なのだろうか? 僕は、結構懐疑的に感じている。現代人は忙しいのではなく、単に、集中力がなく、辛抱がきかなくなっているだけなのではないだろうか。その要因としては、スマホがひっきりなしに鳴るというのはもちろんだが、そもそも長い時間集中するというトレーニングをしていない、というのもあるかもしれない。
 
* 
 
有名な話だが、ビルゲイツはときどき一週間ほど別荘に引きこもって、電子機器をオフにし、集中的に読書をする「考える週」を設けているらしい。この期間中は、よほどのことがないと連絡をとることが許されていないという。

流行りの言葉でいうところの、いわゆる「デジタルデトックス」というやつだろうか。ここでひとつポイントなのは、「普段からそれをやる」のではなく、「ときどきやる」ということだと思う。さすがに通常時は、ビルゲイツもスマホを持って、迅速に対応していると思われる。普段から電子機器を遠ざけることはできないだろう。

「考える週」は、おそらく長期スパンで物事を考えるのに最適であることに加えて、定期的に「長く物を考える」訓練というか、習慣をつけているという目的もあるのではないかと思う。前述の、岡田斗司夫によるところの「イワシ化」を防ぐ効果があるはずなのだ。
 
昔から考えていることではあるのだけれど、グルメな人たちの中には、太っている人だけではなく、けっこう痩せている人も多いな、という印象がある(明確なデータはないのだが)。

その理由について考えてみたのだが、おそらく、グルメな人々はその食べ物を食べるまでにいろいろな情報をキャッチして、予約をとるなり列に並ぶなりをして、それを食べる、という計画性の高い人たちだからだろう。

一方、ただ単に自分の欲望のままにものを食べてしまう人は、マクドナルドでハンバーガーを食べ、コンビニでシュークリームを買ったりするのだろう。手近な快楽を求めてしまうので、太ってしまうのでは、と思う。
 
集中力がなくなった結果、どんどん即物的に快楽を求める人たちが増えていると思う。その解決手段のひとつとしては、「一定時間集中する訓練」をしたほうがいいのでは、というのが自分の意見だ。


 
一番手軽なトレーニング方法としては、やはり読書が挙げられる。一時間なら一時間、アラームをつけて、読書に没頭してみる。その間は、スマホは電源を切るなり、機内モードにでもしておけばいい。
 
それをやり続ければ、少しはイワシ化は防げるかも、と。

サポート費用は、小説 エッセイの資料代に充てます。