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マリオはジャズだった

暇なのでYouTubeを見ていたら、スーパーマリオブラザーズに関連した動画が出てきた。

スーパーマリオブラザーズは、おそらく世界で一番有名なゲームなので、関連するエピソードも多く語られている。中でも、「マリオはたったの40キロバイトでできている」という逸話は、一般の人でもコンピュータを使いこなす現代においては、やや伝説的なエピソードとして有名である。

いま、手元にあるスマホを開いて、最近撮った写真の容量を確認してみれば、数百キロバイトはあることに気づくだろう(実際に自分のスマホで確認してみたら、一番最近撮った写真は自分の猫の画像で、641キロバイトだった)。

動画でも紹介されているが、さすがに当時でもこれだけの容量で一本のアクションゲームを成立させるのは難しく、「雲」と「草」が色違いの同じオブジェクトだったり、敵キャラなどが左右同じ(シンメトリー)になっている、という工夫も結構語り草だ。

でも、真に驚嘆すべきは、最初のステージで出てくる「地上のテーマ」なんじゃないかと思う。

これも、ゲームの「顔」として世界一有名なBGMだが、聞いてみると、1ループが異様に長いことがわかる。構成が複雑なのでややわかりにくいのだが、1ループおよそ1分30秒ほどある。

上記のように、たったの40キロバイトしか容量がなく、キャラの素材をケチったりするなど爪に火をともすような努力を重ねているのに、1分30秒のBGMを許容するのか、と。

結果から見ればこれは英断で、このテーマ曲が作品の質をぐっと押し上げているような気もするので、仮にこの容量のとり方が結果論だったとしても、これだけの容量を食うことを説得するだけのパワーがこの曲にあったのかな、と思うのである。
 
誰もが知っているメロディではあるものの、よく聴いてみると構成もそうだが、メロディそのものもなかなか複雑である。

いつか、この曲をサックスでカバーしている動画を見たとき、この曲は「ジャズ」なんだ、と初めて気がついた。

よく聞くと三連符が随所に入っているし、メロディラインがサックスそのものである。ベース音も、ウッドベースで再現したらしっくりきそうだ。

興味が湧いたので調べてみると、作曲者の近藤浩治氏はサックスプレイヤーの渡邊貞夫氏に影響を受けている、ということだった。なるほど。

具体的に、この曲が40キロバイトのうちのどのぐらいだけを占めるのかはわからないけれど、そんなに少なくない割合なんじゃないかと思う。

最近のゲームは、フルオーケストラを録音したものを使ったり、かなり豪華だけれど、この当時はこの当時で良さがあるな、と。
 
ただもちろん、質の高さと容量というのはもちろん一致しない。例えば、どんな長編小説でも、テキストデータに換算したらほんの数メガにすぎない。

容量をリッチに使って豪華にできるのは「装飾」だけなんだ、ということにあらためて気付かされる。

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