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顔をよく見る人々

睡眠時間が長いのか、比較的よく夢を見るのだが、夢の中の登場人物はかなりバラバラである。もう10年も会っていない高校の同級生が出てきたりする。

しかし、比較的よく出てくる人物というのがいる。それは、YouTuberのはじめしゃちょーである。

は? と思われるかもしれないが、実際によく出てくる。まあ、よくといっても2ヶ月に一回ぐらいではあるので、そこまで頻繁ではないが、夢の中の人物としては頻度が高いほうである。

もちろん、僕ははじめしゃちょーとは面識もなく、向こうは一切こちらのことを認識していない。夢で何をしているのかというと、YouTubeの動画の中に自分も参加していて、一緒に何かをやっている、という感じである。

要は、動画を見続けているうちに、脳の中で「友達」のような存在として認識されてしまっている、ということなのだろうか。

なぜはじめしゃちょーが夢に出てくるのかというと、シンプルによく動画を見ているからだと思う。YouTuberというのはたいていは親近感がある見た目をしているものだが、その中でも、はじめしゃちょーの「そこにいる感じ」というのは個人的に群を抜いている。なんだか、本当にクラスメイトにいたんじゃないか、ぐらいのリアリティがあるのだ。

そこでよくよく考えてみたのだけれど、日常の中で、「他人の顔を見る機会」というのは非常に限定されている。僕の生活の中で一番「顔を見る機会」が多いのは、間違いなく奥さんなのだが、その次は、となると、なかなかピンとこない。

2年前に転職したが、転職した当初からリモートワークが基本なので、仕事中は誰とも顔を合わさない。チャットなどで頻繁にやり取りはするものの、実際に顔を見合わせながら何かをする、ということが極端に少ないのだ。

そうやって考えていくと、親の顔すら見る機会は非常に限定的である。なんらかの方法で、「顔を見た人々の総合時間」というのを測ってみたら、どういう結果になるのだろうか、と興味深く思う。

「親の顔」というのは、実はかなり下のほうに来てしまうのではないだろうか、と危惧している。学生時代の友人たちも、最近では年に一度会うかどうかというところなので、総合時間としてはかなり下のほうにきてしまうだろう。

そもそも、実際に会って顔を合わせていたとしても、顔そのものを見ている時間は全体の中でも限られた割合なのでは、と思う。一方で、YouTubeは一度動画を見始めたらずっと見ているので、顔を見る時間は必然的に長くなる。

そうなると、YouTuberの「顔を見ている時間」というのは、相対的にかなり高くなってしまうのだと思う。夢というのは起きているあいだの記憶を整理している行為だと言われるが、やはり見た顔の時間が長ければ長いほど上位に来ることは避けられないだろう。

これは別に自分だけの現象ではなくて、わりとすべての人に当てはまるのでは、と考えたら、恐ろしいことだなと思ってしまった。死ぬときに、一番顔をたくさん見ていたのがYouTuberだった、ということになったら、なんか洒落にならない気がするのである……。

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