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「終身雇用」なんて存在したの?

総武線に乗っていたら、終身雇用制度がなくなったこれからの日本がどうのこうのとか言う広告が目に入った。なんかよくわからないが、それについて、あなたの意見を述べなさい、みたいな感じの広告だった。小論文を模した感じの広告というか。
 
終身雇用制度がなくなった現代とか言われても、そもそも終身雇用なんてものが日本にあったのか? とシンプルに思う。少なくとも、終身雇用と言うのは日本の雇用形態において、途中で解雇がされにくいと言う傾向であって、別にそういう制度が明確に存在していたわけではない、と思う。

それに、別に今でも生涯同じ会社に勤める人はそれなりにいると思うし。終身雇用について論じるのはナンセンスだな、と思う。

どちらかというと、終身雇用は、社会の「姿勢」であって、「そうあったらいいな」という願望というか。実際は、業績が傾いたらリストラするしかない。そもそも「リストラ」と「終身雇用」はセットなんじゃないかと思う。
 
もうひとつ言えるのは、企業は簡単に倒産するようになった、と言うことだろう。業界の移り変わりのスピードは半端じゃないと思う。わずか二、三十年前の世界のトップ企業と今のトップ企業とでは顔ぶれが全然違う。今の世界のトップ企業はその頃には存在していなかったか、存在していてもまだベンチャーでしかない。そんな感じだ。

当然、それまで影も形もなかった会社が台頭してきたと言う事は、それまでトップの地位にいた別の会社は押しのけられたわけで、凋落したり、倒産したりしているはずだ。

会社そのものがなくなってしまえば、もちろん終身雇用どころの話ではない。つまり、終身雇用が幻想のものになった、というのは、単に企業の寿命が人間の寿命より短くなっただけでは? と言う感じもする。
 
終身雇用がなくなったと言うのは、それは進化ではなくて、単に企業にそれだけの余裕がなくなってきた、と言いかえることもできると思う。まあ、とにかく大変な世の中ですね。
 
でも、何といっても、終身雇用されたと思っていたのに全然そんなことはなくて、何のスキルもないまま中年になるまで塩漬けにされ、必要がなくなってきたら捨てられる、と言うパターンが一番悲惨だよな、と思う。

よくドラマなんかだと一家の大黒柱である父親がリストラされて家族全員が路頭に迷う、みたいなシーンがあるけれど、あれは終身雇用と言うものがある、と言うことを無邪気に信じていたがために起きた悲劇なのかな、とも思う。

会社というのはそのうち倒産するし、必要なくなればリストラされる。僕らの世代だと、そういう感覚はわりとごく当たり前に持っているのだけれど、最初からそんなものを信用していない世代が幸せなのか、というとそれはまた議論の余地がありそうだけれど。

僕が中年になる頃、20年とか30年後は一体どういう世の中になってるんだろうな。全く想像がつかない。AIに仕事を奪われると言う人はいるけれど、AIが全ての仕事をやってくれて、人類はただ遊んでればいい、みたいな、そんな愉快な時代になっていないだろうか。
 
でもたぶん、大企業という存在は少しずつ減っていくんだろうな。もっと会社は二極化すると思う。いまの時代、あらゆることがサービスとして供給されているので、自前であらゆるものをもつ必要性が減っているからだ。
 
例えば、セブンイレブンなんかは大企業だけれど、セブンイレブンの店舗の多くはフランチャイズの、それぞれの事業主が経営している。ああいうスタイルがこれからもっと一般的になるのかな、と。

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