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効果のあることはたいてい凡庸

愛読している漫画「らーめん再遊記」では、ラーメン店を経営する主人公の芹沢達也が、ラーメン業界でのコンサルタントをしたり、トラブルを解決したり、という話が展開される。

「食べ物にまつわるトラブルを解決する漫画」というと、たとえば「美味しんぼ」なども老舗だろう。

「美味しんぼ」では、基本的な話の建て付けはいくつかパターンがあるが、一番代表的なのが、人間関係のトラブルやしがらみなどの問題を、料理によってすべて解決してしまう、というパターンのものだろう。それゆえに、強引な展開も少なくない。

それまで諍いあっていたひとたちも、美味しい料理を食べたらアラ不思議、なぜか万事問題が解決してしまうのである。閑古鳥が鳴いていた店も、たちまち繁盛店に早変わりする。

「らーめん再遊記」はもうちょっと現実的である。たとえば、全く流行らないラーメン屋に対して、メニューのテコ入れをする際、「独創的なメニューで差別化を」みたいなことを言う場合もあるが、もっとシンプルな解決策を提案することもある。「チャーハンと餃子を追加する」などだ。

それを提案された側は、あまりのみもふたもなさに、愕然としてしまうシーンが描かれる。

久部緑郎, 河合単, 石神秀幸「らーめん再遊記(3)」

直接提案しているのは芹沢達也ではないが、ラーメン経営者がメニューのテコ入れを提案するシーン。

問題解決をする際に一番大事なのは、まずもっとも効果のある施策を行うことである。ものすごく当たり前のことだが、意外と見過ごされがちではある。

ダイエットをする際、まず手っ取り早く、朝食をダイエット食に置き換えてみたり、ということに取り組んだりするだろう。しかし、本当に効果があるのは、おやつに食べているポテトチップスを削ることで、それが一番効果のある施策かもしれない。

食事は生命維持に必要なのだから、削るにしても限度があるが、おやつは過剰なカロリー摂取なので、それを削るほうが効果は見込める。

家計などで考えてもそうだろう。貯金が思うように貯まらないので、生活のちょっとした工夫で乗り切ろう、などと考えてもたいていあまり効果はない。

多くの場合、月々の支出で一番多いのは住居費である。僕も、月々の支出で一番大きなウェイトを占めている。なので、賃貸であれば、とりあえずもっと家賃の安いところに引っ越す、というのが真っ先に取り掛かるべきことである。

次に高いのは、たとえば携帯代などの通信費だろうか。節約というと、まず食費を削ることを思いつくが、食事は生きる上では欠かせないものなので、削るにしても限度がある。ましてや、数十円程度の節約を積み重ねても、得られるものは限られている。

何かをやるうえでは、定量的に物事を見るのが大事なのでは、ということである。インパクトが10のものを10個やって100にするより、インパクトが100のものを1個やったほうが効率がよく、楽だ、ということもあるだろう。

また、インパクトが10のものに10個取り組むと、「いろいろやってる」ように見えて「やってる感」は出るのだが、実際のところ、気が散って集中できていない、ということはあるだろう。

効果のあること1つに絞って、それに向けて全力を注ぐ、というのが一番いい。そこらへんは、普通の会社員にはなかなかやりにくいことである。サラリーマンのサガとしては、どうしても「これだけたくさんのことに取り組んでます!」ということをアピールしたくなる。「これしか取り組んでません」というのは非常に報告内容としては心許なく感じられるのだ。しかし、実際に効力があるのはそういったものなので、堂々とすることが大事である。

あと、「誰でも最初に思いつくことが、もっとも効果的」ということはしばしばある。なんの捻りもなく、愚直に正攻法で取り組むのが一番効果的、というやつだ。

これも、変に成果を出そうとすると、一番効果のあることからむしろ遠ざかることをしてしまいがちである。そうならないようにしたい。

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