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知識によって、見え方が変わる

根腐れが原因で、キャンプをしていたテントに巨木が倒れ、女性が亡くなってしまった、というニュースを見た。

そんなことあるの? と素人ながらに思ってしまったのだが、よく考えてみると地震などで寝室の本棚が倒れてくる、みたいなシチュエーションに近い状況とはいえる。木がこのタイミングで倒れてくることは予想はできないかもしれないが、朽ちた巨木はいつかは倒れるのだから、その「いつか」に当たってしまった、ということなのだろう。確かに言えることは、巨木は本棚よりもはるかに巨大で重い、ということである。

この季節、レジャーでアウトドアに行って、事故で亡くなってしまう、というのは一定数ニュースになる。非常に痛ましいことだと思う。妻を亡くしてしまった夫のことを考えても胸が痛むし、その場にはいなかった家族のことを考えても。

しかし、それに加えて、そのキャンプ場の管理人も、自分に落ち度はなかったのか、と自責の念に駆られていることだろう。責任問題とは無関係に、だ。

誰が悪かったのか、どうしたらよかったのか、というのはこれから当事者間で話し合われるのだろう。当事者ではない人(僕もそれに含まれるわけだが)は、ただこのニュースを見て、一時間後にはすっかり忘れてしまうわけだけれど、当事者のあいだでは、「一生傷に残る出来事」として記憶に強く刻まれるし、現実的な影響を及ぼすのだろう。

そう考えると、まさに青天の霹靂だし、いろんな世界線が存在するんだな、とおそろしくなる。

yahooコメントがたくさんついていたので、それも読んでみた。まず、「巨木が倒れてくるなんて、そんな状況は事前に想定できないだろう」というコメントが目についた。かなりレアな事象なので防ぎようがなかったのでは、と。しかし一方で、「ジャングルに住む人は絶対に巨木の近くに寝泊まりしない」など、別の世界の常識について語っている人がいる。

林業関係者らしい人は、この季節なのに芽吹いている様子がないので木が死んでいるのではないか、など専門的なことを書いている。確かに、「わかる人が見ればわかる」のだろうか。

素人ならわからないことも、見る人が見ればわかる、というのは結構あることだ。僕も、一番最初の仕事はトラックでの配送の仕事をしていたので、配送の際は事故を防止するために「輪止め」をすることが会社で義務付けられていた。

なので、街中で輪止めをしていないトラックを見ると、「あ、危ないな」と思ったりもする。一見すると坂道に見えなくとも、緩やかに坂道になっていて、ゆっくりとトラックが動いてしまうこともある。輪止めをしていないことによる事故の事例を知っているから、そういうことを思うのかもしれない。

アウトドアの知識が十分にないと、「見え方」が違って危険だ、ということはあるのだろう。それはキャンプ場の管理人でも同じことである(当然その知識は持っているはずだが)。

わからないことを未然に防ぐことはできない。であれば、「わかる」ようになるためには、そういったことをたくさん知っておくことが大事だろう。キャンプ場での事故ってどういうものがあるのだろう。

調べてみるといろいろあるらしい。これからキャンプに行こうというのに「死亡事故」の事例を見る人はいないと思うのだけれど、必要なことだ、というのがよくわかる。

あと、対策としては十分とはいえないが、現地で経験豊富な人の「声かけ」も重要だと思う。もっとも、ベテランの「声かけ」は若い人にとっては敬遠されることも多いが。


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