見出し画像

華やかながらも世知辛い

少し前になぜかYouTubeに流れてきた元客室乗務員の方のYouTubeをたまに見ている。

もともとJALに勤めていらっしゃったのだが、経営破綻の際に色々あって会社を辞めることになり、その後は転職活動に苦労した、みたいなことを自虐的に振り返っている。

確かに、キャビンアテンダントのセカンドキャリアは気になる。コロナが流行りはじめた頃にフライトが激減して、キャビンアテンダントたちが一般企業に出向して働く、といったことがニュースになっていたりしたけれど、当然うまくいっている人ばかりではなく、苦労する人もたくさんいたのだろう。

驚いたのは、キャビンアテンダントはパソコンスキルが全くないということだ。たしかに、少なくとも機上ではパソコンを操作する瞬間なんてあまりなさそうに見えるけれど、実際にそうらしい。そうなると、転職をするにしてもなかなかきつい、ということになるようだ。

企業に採用されるには実務経験が必要だが、そもそも採用されないので実務経験が積めない、というジレンマがある。客観的にみたら「そらそうやろ」という感じではあるが、当事者からしたら、どうせいっちゅうねん、という話である。

転職活動にかぎらず、企業の新規事業などを担当すると、当然ながらこの手の壁には真正面から激突することになる。実績がないから受注ができない、受注がないから実績が積めない。八方塞がりである。

これを突破するには、ある種のハッタリというか、実績がないのに実績があるような感じで話したり、なんとかして「大丈夫感」を出して無理やり受注する必要があるのだけれど、精神的にも体力的にも、結構負荷はかかる。そもそも、「実務経験がない人を採用するわけにいかない」というのは採用する側の理屈からしても至極真っ当で、完全に正論である。

素人と経験者だったら、当然経験者の方を取りたいと思うのは普通のことだろう。なので、この場合、採用担当者を恨むのは完全な筋違いで、逆恨みのようなものである。

だから、日本の風習としてまだ一応残っている、「新卒一括採用」はとてもありがたいのである。未経験で何もできない人をとりあえず雇ってくれようというのだから、こんなにありがたい話はない。

就活がだるいとか、就活めんどいとか、面接が理不尽だと感じている人は、実はそれが社会からもたらされた最大の優しさであるということに気づいていない。もちろんその機会を逃してもリカバーはできるが、難易度があがることは必至である。新卒一括採用は最大のチャンス、ボーナスステージのようなものだ。面倒だとか言っている場合ではない。



しかし、キャビンアテンダントの仕事で一生懸命頑張ってきたのに、それらが全然生かせないのは結構しんどい。しかし、キャビンアテンダントのセカンドキャリアとしてよく聞くのが金持ちと結婚することとか、マナー講師として有名になるとか、そういったものであることを考えると、なかなか狭き門である。一握りの人しかなれない仕事なのに、それを卒業してもさらに一握りの人しか「よいルート」が整備されていないというのはなかなか世知辛い。

しかし、どう考えても華やかそうな仕事にそんな落とし穴があるとは、世の中というのは本当に恐ろしい。

コロナによって一般企業に出向させられたキャビンアテンダントの中には、そういった機会を与えてもらえて逆に助かったという人も多いのではないだろうか。出向だったら断られることもないし、あとは本人の頑張り次第のような気もする。

ちなみに僕は機内のフライトで自分が望んでいないタイミングで飲み物とか食事が出てくるのがあまり好きではないので、ドリンクを運んでくるなら入り口のところでペットボトルでも渡してくれよと思ってしまう。

まあ、ほぼエコノミークラスしか乗ったことがないので、そもそも客としてカウントされていないのかもしれないが。


サポート費用は、小説 エッセイの資料代に充てます。