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そのスタンスいいね!

いま、仕事で自分が管理しているスタッフが3名いる。最近は営業職的なことをやっているが、スタッフに指示を出しつつ、自分も動いて、目標を達成していくという仕事である。

スタッフはそれぞれ個性が違う。みんなそれぞれいいところがあり、同時に微妙なところがある。微妙なところはもちろん少ないほうがいいのだが、文句は言えない。仕事というのは、限られたリソースで最大の成果を目指すものだからだ。

人員配置というのは基本的にはパズルゲームだと思う。不得意なことはなるべくさせず、得意なことをやらせるのがポイントである。しかし、単純なパズルゲームと違って難しいところは、得意なことをやらせ続けても、中長期的にはバランスが悪い、ということである。

なんというか、人は得意なことばかりやっていると、仕事が単調になってしまい、飽きてしまうようである。やはり、苦手なことができるようになる、というところに、達成感を見出すのではないだろうか。

「私は仕事にやりがいは求めません、できる限り簡単な仕事で、いいお給料が出ればそれでいいです」という人であっても、家に帰ったら一生懸命ゲームをしていたりする。ゲームというのはまさに「できないことをできるようにしていく」ことを繰り返すものなので、これは人間の本能といってもいいだろう。「仕事がつまらない」と言っている人は、単調な仕事ばかり与えられ、挑戦する機会を得ていないだけなのでは、と思う。

それと関連して、人は本能的に、自分の「苦手な仕事」を求める傾向にあるのではないか、と思っている。たとえば、コミュニケーションに難のある人ほど、コミュニケーション能力をもっている人に憧れ、営業職などを希望する傾向にあるように観察している。得意なことをさせ続けると、すぐにつまらなくなってしまうらしい。

僕が管理しているスタッフを、便宜上、A、B、Cと名前をつけてみる。Cはいまは自分が指示出ししているものの、メインの人員ではなく、ヘルプ的に入ってきている人なのだが、一番バランスがとれていて、これといった欠点は見あたらない。しかし、もちろんだからといって仕事をふり続けると、業務量が多くなりすぎて、そのうちパンクしてしまう。なので、仕事を振りたい気持ちをぐっとこらえる、ということになる。

Aは以前からいるスタッフで、Bは最近入ってきたスタッフである。Aは当然ながらBよりは経験豊富なので、頼りにしていた。Bは瞬発力はそこそこあるものの、こう言ってはなんだが能力的にはさほどではなく、しかもいろいろと教えても伸び代があまり感じられず、これは結構厳しいかな、と思っていた。

しかし、数ヶ月接してみて、自分の中で変化が生じつつある。Aは以前からいるスタッフなので、それなりに頼りにしていたのだが、かなり愚痴っぽい性格のようで、会社の方針や他の社員などについてグチグチといろいろなことを僕に言ってくるようになった。まあ、愚痴られているということはそれなりに信頼関係はできているのかもしれないが、なんというか、会話の内容がジメジメしていて、こちらが疲れてしまうのだ。

一方で、Bは能力的には相変わらず微妙ではあるのだが、とにかく瞬発力がすごい。「これやっといて」と言ったらすぐに手をつけ、あっという間に終わらせてしまう。もちろん、クオリティには若干難があり、それによって生じたトラブルの尻拭いなどもしなければならないのだが、スピード感があるので、そこは頼りになる。仮にトラブルが発生するにしても、発生するスピードが早いため、わりと早くに軌道修正ができる。

Bの日報を読んでいて少し驚いたのだが、Bはどうも仕事が楽しいらしい。なんかいろいろと刺激があって、面白いのだそうだ。それを読んだとき、そのスタンスいいね! と咄嗟に思った。能力がどうとか、仕事をするうえではそういうのはハッキリ言ってどうでもよく、ただ「仕事が楽しいかどうか」でいいんじゃないか、と最近は思っている。

仕事が楽しければ、いろいろなことを積極的に学ぼうとするし、他人のことをグチグチ言うようなこともない。最初はちょっと能力的に厳しいかもな、と思っていたBだが、そういうスタンスなのだということを知ってからは、積極的に仕事を振るようにしている。「挑戦し、成長する喜び」を知ってもらえたら、上司としての冥利に尽きるというものである。

スタンスというのは要するに姿勢のことだが、「楽しんで仕事をする」に勝るものはないような気がする。まあ、トラブル対応も何もかもするのは自分なのだが、それでもお釣りがくるな、と思ったのである。

ジメジメした人は、それだけでマイナスになっているようだ。自分も気をつけていきたい。

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