見出し画像

口がうますぎることへの弊害

最近、「期待値コントロール」について考えることがある。人は、他人からかけられている期待値よりも上回った成果が出せたとき、はじめて評価される。その原理をうまく使っている人とそうでない人では、「世の中の渡り方」が違うな、と気付いたのだ。
 
多大な期待をされているという状態は、基本的にはマイナスな状態だと認識するのが正しいのかもしれない。イメージとしては、借金を抱えているような状態だ。

「期待をされている」ことは、つまり「プレッシャー」と表現することもあるが、高い成果を期待されている分、「期待に応える」ためには、それよりも高いものを出さなければならない。永遠に高い期待値を満たせるわけではないので、どこかで破綻を迎えることになる。


 
本当にできる人というのは、この「期待値コントロール」がうまい人なのかな、ということを考える。期待値が高いとプレッシャーも大きいが、期待値が低すぎると何も任せてもらえない。塩梅が難しいのだ。
 
ひとつ意識するといいのは、「実態以上によく見せようとしない」、ということだろうか。実態以上に物事をよく見せようとするパフォーマンスが必要なこともあるが、それは借金をするようなものなので、あとあと大きな問題を生む。

世の中は「プレゼン力」が高い人間がよいとされるが、高すぎるプレゼン力は無用な期待を生むこともあり、必ずしもうまくいかないのでは、という気がしている。
 
以前、UEIというベンチャー企業が、enchantMOONという独自のタブレット端末をOSから設計して開発し、市場に投入していた。「手書き」を軸にした斬新なタブレットで、ハード面でもハンドルのようなものがついている、というかなり特徴的なデザインだった。

画像1

CEOの清水亮氏のブログではたびたびこれについて言及していたし、これの製造にかかわる本なども出版していたりして、当時僕はけっこうこれを読んで親しんでいた。なので、「最初から欲しいというほどではないけれど、発売されてから評判が良ければ、購入を検討したい」と思っていたのだ。


 
実際は蓋を開けてみると、バグや不具合が頻発し、その後もそれらを乗り越えることができず、いまは販売停止となってしまっている。評判が悪くなければ、どころか、ほとんど褒めている人はいない、というような感じだった。
 
これは、いろんな側面があると思うのだけれど、ベンチャー企業がゼロからハードを設計して送り出すことは通常はできないので、それ自体はすごいチャレンジだと思う。一方で、CEOの清水亮氏の「口がうますぎて」、期待値が爆上がりしていた、という側面も否めないだろう。

新しいものを世に送り出すには、ある程度高い「期待値」が必要だが、当然ながら、評価されるためにはその高い期待値に応えなければならない。いろんな考え方はあると思うのだが、期待値をただ上げ続けることが得策ではないことはわかるだろう。
 
世の中を根本から変えてしまうほどのインパクトのあるものは、最初はひっそりと世に出てくることが多いような気がしている。ビッグマウスがだめとは言わないが、「期待が高すぎる」ことはかなりリスクだ、というのは肌感覚で持っておいて損はないと思われる。

サポート費用は、小説 エッセイの資料代に充てます。