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牛肉を食べたら牛になりますか?

新型コロナウィルスのワクチンを打った人はかなり増えているとは思うのだけれど、中にはワクチン接種を拒否している人もいる。

若い人がファイザーやモデルナなどの新型コロナウィルスワクチンを拒否する理由として、「仕組みがなんだかよくわからなくて怖い」というのがあるようだ。「mRNAを打ち込む」というのが理解できなくて恐怖なのだという。

実際のところ、これは新しい方式のワクチンのプラットフォームで、ウィルスそのものを不活化して打ち込むわけではなく、ウィルスの「情報」を身体に読み込ませることで擬似的なウィルスタンパク質を生成し、それに対抗する抗体を作り出そう、というものになる。

確かにいきなりこんなことを聞かされても、よくわからなくて怖い、と思ってしまうのは当然の反応だと思う。
 
ワクチンが怖いと言っている人々の意見の中で、個人的に面白いなと思ったのが、 mRNAワクチンを打つことで、自分の遺伝子に影響を与えることを恐れている声だった。

注射器で遺伝情報を打ち込むことによって遺伝子が変異する、というのは、たとえば映画などではよくありそうな設定ではあるけれど、そんな簡単に人間の遺伝子が変容するはずがない。もしそうなったら、すごいと思う。仮面ライダーや、スパイダーマンみたいな人間だって作り放題ではないか。ONE PIECEみたいな世界もあながち夢ではないかもしれない。


 
何年か前に、「コラーゲン」について調べたことがある。人間の肌の成分でもあり、食べるとお肌のツヤが良くなるなどとして、よく宣伝文句に取り上げられていた。

しかし、コラーゲンをそのまま食べても、自分のコラーゲンが生成されるわけではない。当たり前の話だが、コラーゲンを食べたあと、いったん胃で消化され、分解されてから吸収される。

コラーゲンの正体は、要するにタンパク質なので、コラーゲンを食べたとしても、ただ単にタンパク質を摂取しているのと同じなのである。

考えてみれば当然の話なのだけれど、なんとなくぼんやりと考えているとつい勘違いしてしまう。

例えば、牛肉を食べても牛になるわけではない、というのと同じことだ。毎日牛肉を食べれば、当然ながら食べた分だけの「牛の遺伝子」も摂取していることになるわけだけれど、遺伝子は消化過程で完全に分解されるので、どれだけ牛肉を食べても牛の遺伝子が自分に影響を与えることはない。

考えてみれば当たり前のことが、前提条件がちょっと違うとわからなくなってしまうらしい。


 
もちろんこの種のデマは幅広い年代層で信じられているので、ことさらに若者が信じている、というわけではないのだろうけれど、若い人ほど、「自分に影響を与えるかもしれないもの」に対して結構敏感だよな、と思う。

若い分だけ、それだけこれから長い期間を生き続けなくてはならないので、当然といえば当然なのかもしれないが、たまに「拒絶反応」に近いものを示す人がいると、ちょっとしたカルチャーショックを感じる。

「自分」というものにこだわって、「他のもの」を取り入れようとしない傾向が見受けられるような気がするのだ。
 
色々とまことしやかな噂が流れて、ワクチン接種を拒否している層もいるようだけれど、できればちゃんとしたリソースからちゃんと情報をとって、自分で判断して接種するかどうかを決められたらいいのでは、と思う。

僕も自分の判断で接種したものの、リスクがゼロというわけではもちろんないと思うからだ。

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