空白のぺージについて

今年の9月11日は、2001年に米国で起きた同時多発テロからちょうど20年という節目であり、かつバイデン政権がアフガニスタンからの米軍撤退を実行したということもあって、20年経ったいまでもセンセーショナルな日だった。

同時多発テロが起きた時は僕は中学2年生だったが、ちょうどその夏、米国ユタ州のソルトレークシティという場所にホームステイしており、わりと時期的にニアミスしていたので、記憶にはよく残っている。

あらためて見ても、飛行機がビルに突入していく映像は衝撃的で、それがリアルタイムで起きていた当時のショックはすさまじかったな、と思う。
 
ちょうどテレビをつけていたら、NHKで同時多発テロの特集をやっていた。内容は、同時多発テロについて調査をした米国上院情報特別委員会(United States Senate Select Committee on Intelligence)のレポートの中で、「空白の28ページ」についての特集だった。

当時のブッシュ政権が、国家上の機密に相当するとして、サウジアラビアがテロに関与している疑惑の28ページを「対外秘」にしたというのだ。

その公表を目指す遺族と、FBI元捜査官が真相に迫ろうとする、そういう構成の番組になっていた。


 
同時多発テロについては、日本でもわりといろんな「陰謀論」みたいなのがひしめいていて、正直に言うと「おなかいっぱい」なのだけれど、単なる憶測と妄想で書かれた陰謀論と違い、この文書の公表をめぐる民衆と、この20年間の歴代政権との攻防は事実なので、ちょっと興味深かった。

日本ではあまり話題になっていないのか、番組が終わったあとに日本語で検索しても情報がほぼヒットしない。英語だとそれなりに検索がヒットしたので、とりあえず英語版のWikipediaのページを読んだりしていた(和訳版のページはなし)。

The 28 pages - Wikipedia 

探してみると、日本語だとこういう解説もあった。

9.11以降の中東を中心とする問題について最近明らかになった驚くべき事実(英国議会の「チリコット報告」など) | キヤノングローバル戦略研究所 

結局、この文書は2016年に公開になったそうなのだが、そこで明らかになったのは、当時の駐米サウジ大使をはじめとする、サウジ政府のテロに対する、財政や物的支援などの直接の役割だった。

NHKの番組では、誰が誰と接触したか、というのをひとつひとつ検証する、みたいな構成になっていたので、概ね真実らしい、と納得することができた。


 
陰謀論というと少し胡散臭さが増すのだけれど、実際のところは、陰謀というのは世の中にひしめいている。

誰かが世界をまるごと牛耳って裏で操っている、というのは荒唐無稽な妄想ではあるけれど、何かの犯罪や戦争の裏では、決して表に出ずにそれを手引きしている人がいる、というのは概ね事実だろう。

というのも、戦争というのはそれを主導することが明るみになれば犯罪者として糾弾されることは必至であり、通常は、「自分が直接手を汚さずに」行うものだからだ。

事実、アルカイダのリーダーであり、テロの首謀者であるビン・ラーディンを殺害しても、戦争は終わることがなく、最終的には米軍の敗北のような形での撤退に終わったわけだ。

米国民は、テロの遺族だけでなく、20年続いたアフガニスタンの戦争で250兆円ものお金が動き、最終的にそのお金が誰のポケットに入ったのか、真剣に追求するべきだろう。
 
もちろん、日本も対岸の火事と笑ってはいられない。こうしたことは、どの国家にだって起こりうるからだ。

政治も軍事も、直接的に手を下すのではなく、間接的工程が重要、というのは古代から変わらないところだ。

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