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世界は無名の人々が作っている
昔、何かの本で読んだのだけれど、「スカイツリーも、瀬戸大橋も、作ったのはサラリーマンだ」という言葉があった。
なかなか含蓄のある言葉で、たとえば目の前にあるiPhoneも、スティーブ・ジョブズが作ったとされているが、実際に手を動かしたのはアップルのエンジニアたちだ。そのエンジニアたちが設計したものが、中国の工場で生産され、海を渡って自分の手にやってきたのである。
その過程には膨大な人の手がかかっている。ジョブズの関与の度合いでいうと、ごくごく一部でしかないだろう。
スカイツリーは日本人なら誰もが知っている建造物ではあるが、誰が設計したのか? についてはあまり知られていない。ググってみると、どうもこの方が設計した、ということはわかった(ちなみに、スカイツリーのWikipediaにもこの人の名前は載っていなかった)。
業界ではもちろん有名な方なのだろうが、一般的にはあまり名前は知られていないものと思われる。そもそも、設計にしたところで、この人が一人でやったわけではなく、チームワークで行ったのだろう。
もちろんスカイツリーを建てるためには、そのほかに膨大な人々の手が必要だ。そして、基本的にそれらはすべて「サラリーマン」なのだ。
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サラリーマンをやっていて思うのだが、この世界はなかなか奥が深い。もちろん、建築士やデザイナーとして世界的に個人の名前が売れている人がいて、「この人がデザインした」というと箔がつくものもあるが、それはある種、その人のブランド力を使った、ということであり、全体からみればごくごく一部にすぎない。この世のほとんどのものは、無名のサラリーマンの手によって作られている。
最近、会社で企画の仕事を中心にやっているので、こういう本を読んだ。僕はエンジニアではないのだが、一応IT企業に勤めているので、考え方など参考になるところは多かった。
企画の仕事は奥が深い。もちろん、「いい企画書」を作ることが前提なのだけれど、ただ単に「いい企画書」というだけでは通用しない。
本書によれば、いい企画とは、「通る企画」のことだという。では、どういうのが「通る企画」なのかというと、会社の方針に沿っていて、ちょうどいい規模感で、現状の課題を解決し、短期間で結果が出るもの、らしい。
著者は「さまざまな企画を通してきた」と紹介されていたので、どういう魔法を使ったのかと思ったけれど、なんのことはない、「会社が必要としている企画」を作ってきただけなのだ。
たとえ話として、「いい企画だからと会社の方針を理解せずに作成された企画書」は、「お肉を買ってきてほしいとお願いしたのに、いい魚があるからと魚を買ってきた子ども」と書いてあった。企画を申請する側は、「いい魚(=いい企画)であれば採用されるだろう」と思って意気揚々と魚を買ってきても、実際に必要とされているのはお肉なので、「まあ、いい魚だけどね……」で終わってしまう、というわけだ。
当たり前といえば当たり前のことを徹底して、企画を通していったのだろう。
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いまは僕はたまたま企画を立案することを主業務にしているるが、ほんらい企画というのは誰が立てても構わない。会社は、より多くの利益をあげ、課題を解決する企画を常に望んでいるので、いい企画が出てくることに対して異論があるはずもない。
冒頭でスカイツリーのことを例に出したが、あれももちろん一人の人間が思いつきで作ったわけではなく、さまざまな機が熟し、これを実現するタイミングが到来したときに、実現させた人たちがいたのだろう。
スカイツリーだとあまりにも規模が大きすぎるような感じがするが、基本的にはそうやってできるものなのかな、と思っている。
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