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生々しさがないと

最近、採用面接をがんばっている。結構怒涛の勢いで応募があるので、大体3人ぐらいにまとめて面接をしている。いわゆる、グループ面接というやつだ。まるで人事みたいなことをしているが、通常の業務の合間を縫って面接を入れてるので、結構忙しい。
 
応募してくる人は玉石混交というか、まぁいろんな人がいる。さすがにニートみたいな人はいないが、フリーター的な人はいるし、うちの会社の場合は外国人も結構来る。外国人の社員が比較的多いので、あそこは外国人の採用をしてくれるという噂が広まってるのかもしれない。
 
僕はこれまで数多くの面接をこなしてきたが、別に面接のプロではない。だから、そんなに凝った質問はしない。たまに変な質問思いついたりする時があるが、受けに来た人を困らせても仕方がない。

前職では倉庫で働くアルバイトの採用なんかもしていたが、アルバイトの面接は本当にやばかった。あなたの長所を教えてください、と質問したら、長所ってなんですかと返されて唖然としたことがある。

筆記試験として簡単な四則演算などをやらせてみたこともあるのだが、掛け算ができなかった人もいた。あんまりひどいのでもう途中からはやめてしまった記憶がある。

今の会社で僕がやってるのは正社員の採用面接なので、さすがにそんなにひどい事はないのだけれど。

採用面接で一番重要なのは履歴書だと思っている。口では何とでも言えるか、履歴書は嘘をつけないからだ。採用担当は履歴書を見て違和感を探す。

違和感があればその違和感を質問するので、それに対して納得できる答えを返すのが基本だ。例えばいい大学出ていたら「良い人材だ」と思う事は無い。いい大学を出ているのに飲食店のアルバイトをずっと続けている人に対しては、どうしてなのかなぁと思ったりする。そういった疑問点に対してきちんと答えられるのならば問題は無い。
 
採用面接としては割とふつうの質問なのだけれど、採用担当からすると非常に便利な質問がある。「今まで自分が主体的に挑戦したことを語ってください」という質問だ。

こないだ面接した人は、もう30代後半なのに、自分が学生時代に留学したときの経験を話してきた。社会人になって10年以上が経過してるのに、主体的に挑戦したのが留学時代の話というのは何となく違和感がある。

つまり履歴書に書かれている仕事のキャリアの中では、あまり壁にぶち当たってこなかったと言うことだろう。それはそれでいいんだけど、こちらが求めているポジションによっては、マイナス材料にもなる。
 
経験には「生々しさ」がある。生々しさとは、きれいごとではいかない、けれどその状況ではそうするしかなく、最適解だった、というようなものだ。

仕事をしていれば絶対にそういうことがある。すべての人が完全に納得いくようなソリューションというのは現実にはなかなかないので、折衷案として、端から見ると非合理的としか思えないようなことが決定されたりする。

しかしそれは全員の事情を考えれば仕方のないことだったりして、ある意味では「合理的」なのだ。そういったものは、たとえ積極的に話さなかったとしても、なんとなく言葉の表層に出てしまう。それを嗅ぎ取るのが面接官だと思う。

壁にぶち当たったり、失敗したり、悩んだりした事は絶対に自分の糧になる。経験豊富な人に対して面接をすれば、その人が「経験」してるかどうかを割とわかってくれるのではないかと思う。そういうのが語れない、生々しさのない言葉を発する人は、あんまり壁にぶち当たったことがない人だということが見えてしまう。
 
僕は自分が優秀な面接官だと言うつもりは全くないけれど、そういうところを注目して面接をしている。良い人がくればいいのだけれど。

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