政治をしてくれて、ありがとう

特に政治的に支持している政党はないし、好きな政治家もいない。「政治に関心がない」といえばそうなのかもしれない。

しかし、いまの日本で「魅力的な政治家」と誰もが認める政治家っているものだろうか。元・大阪府知事だった橋下徹氏あたりが、直近だと最もホットな政治家だったと思うけれど、それに匹敵する人すら見当たらない。
 
ひとつは、誰も政治家なんてやりたくないから、というのがあるだろう。政治家というのは、徹底的に他人から恨まれる仕事だと思う。僕は間違ってもやりたくない(やれ、と言われることもきっとないだろうから、この点に関する心配は全くない)。
 
なぜ政治家は恨まれる仕事なのか。仕組みは単純で、政治の本質とは、要するに「分配すること」だからだ。税金などで国民からお金を吸い上げ、それをあなたはこれぐらい、きみはこれぐらい、と分配していく。

もちろん国会議員というのは法律をつくるのがメインの仕事だけれど、法律だってなんのためにあるのかといえば、「交通整理」をするためだろう。政治家が何かを生み出すことはない。すでにあるものを分配したり、不公平にならないように規制したり、競争させるために緩和したりするだけ。
 
みんなに十分に行き渡るだけの原資があれば、トラブルは少ない。現に、高度経済成長期で日本全体が儲かっているときは、政治家ももっとブイブイ言わせていたと思う。

配る原資が豊富にあり、方向性も定まっていたので、政治家は権力闘争に明け暮れていればよかった。もともと政治家になりたがる人は権力闘争が好きな人種だと思うので、それは楽しい夢のような日々だっただろう。

ところが、バブルがはじけてリーマンショックがあってコロナショックがあって、まったく余裕がなくなり、政治家本来の「分配する仕事」を履行しなければならなくなったとき、権力闘争なんてやっている場合じゃなくなってくる。

コロナで飲食店が自粛要請され、世間から同情を買い、政府には批判が集まっている。こういう事態になるととても厄介だな、と思う。

個人的にも飲食業の方々には同情するし、政府はなんとかすべきではないか、と思う。しかし、これで政府が飲食業を全面的に支援し、しばらく遊んでも問題がないようにしたとすると、他の業種の人が「なんであいつらばっかり」と不平を漏らすのは必然ではないだろうか。

自分たちは一生懸命働いているのに、飲食業の人たちがお金をもらってゲームしたり旅行したりしていたらムカつくのは当然だろう。困窮している国民を支援するのが政府の仕事だが、不用意に支援するとまた別の問題が勃発する。

結局のところ、「分配」すれば「不公平だ」と騒ぐ人が必ずいるので、解決策などないのだ。なるべく「全員で不満を分かち合う」のがベストだが、そううまくいくものでもないし、少しでも不満を分けられようものなら「政府は何をやってるんだ」と怒る身勝手な人たちがたくさんいる。たまったものではないな、と思う。

究極のところ、「不満な人々」を制圧するには、軍事力や警察力によって、暴力的におさえこむしかない。中国などはその最たるものだろう。

コロナの状況においては、独裁国家ほど強い。アメリカがめちゃくちゃなことになっているのは周知の通りだ。
 
間違っても、日本では政治家なんてやりたくはないですね。「政治家をやってくれてありがとう」、と感謝したいぐらいです。できれば、もっとまともな人がなってくれると、もっとありがたいんですが。

サポート費用は、小説 エッセイの資料代に充てます。