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バーチャル空間で仕事をする

フルリモートで仕事をしはじめてしばらく経つ。もう完全に慣れてきて、それなりに仕事も捗るようになった。

リモートワークをしていない人から、リモートで仕事するなんて考えられない、みたいなことを言われたりもするけれど、慣れてくると会社にいるのと本当に変わらない。「家にいて集中できるの?」みたいなことも言われるけど、これも慣れだと思う。

下手をすると日に6つも7つもミーティングが入るので、サボる暇などない。会社に行っていなくても、それなりに精神的にも消耗する。
 
面白いのは、これが常態化しているので、たとえ会社に行っても会議は会議室ではなくオンラインで行われることが多い、ということだ。会社のカレンダーと会議のシステムが連動しているので、まず始業と同時にその日の予定をチェックして、必要な会議があったらその時間にオンラインの会議室に入る。

出社して会議室を使うこともあるが、必ずメンバーの誰かひとりはリモートで参加することになるので、結局オンラインでも並行して開催、ということになる。まあ、わざわざ会議室を抑えなくても会議ができるので、そもそもリモートのほうが手軽で便利だ、ということがあるのだけれど。


 
バーチャル空間で仕事をしているようなものだ。身体はここにあるのに、仕事中は、その「会社のようなバーチャル空間」で仕事をしている。

フルリモートだと仕事と仕事終わりの区別がつきづらい、ということが世間では問題になることもあるようだけれど、うちの会社は20時以降は申請しないとパソコンを強制シャットダウンする機能がついているので、その心配もない。

そういう部分すらもやはり「慣れ」で、仕事が終わってパソコンをシャットダウンすると、会社から出てきたような気分になる。人間の適応能力というのはすごいですね。
 
いまは緊急事態宣言中だから、こういう体制をとっているのは仕方がないだろう。まあ、僕個人は別に不満なんてないのだけれど。しかし、いずれは社会が正常化するので、当たり前のように出社する時期がやってくるのだと思う。

しかし、そうなったとしても、いったんこの様式になったら、もう「元に戻る」ことはないのだろうな、と思う。空間に縛られない、というのは明らかなメリットだからだ。


 
昔、SF映画で、人類が現実だと思っているものはただの夢で、人類の本体は本当はカプセルか何かに入っている、というようなものがあった。ああやって描くとちょっとかっこいいけれど、現実世界はちょっとそれに近づいているかな、という感じがしている。

いまうちの会社で使っているシステムは、アバターこそないものの、本当は家にいて在宅で仕事している僕は、あたかもバリバリと会社で仕事をしている僕と変わりがない。「家」が「カプセル」に置き換わっただけだ。

実体である「僕ら」は、誰も会社に出社していないのだから、「会社」という想像上の存在があるにすぎない。……そうやって考えていくとちょっと怖いけれど。
 
あとは、空間的な奥行きがあればもっといいのにな、とは思う。たとえばゲームの画面みたいに、「会社」というものをバーチャル空間で表現できれば、かなり入り込めるだろう。調べてみたら、一応そういうものもあるみたいけど、まだまだマイナなようだ。仮想空間上で本当に「出社」するのも、悪くないかもしれない。

……それに慣れすぎる、というのも考えものだけれど。

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