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投資はしません

最近、投資をやろうぜ、というメッセージをよく見かける。いわゆる情報商材的な詐欺師だけでなく、日本政府も個人投資を促したい考えのようだ。例えば、2024年に新しく刷新されるNISAも話題を集めている。

一方、国が投資を勧めてくるのはおかしいのでは、という陰謀論的な考えの人もいるようだ。これまでは銀行などが預金を運用していたのに、なぜ個人にまで投資を迫るのか、と。

僕は陰謀論とまでは思わないものの、政府が個人にリスクのある投資を勧めるのはなんとなく違和感がある。まあ、何を信じるかは人それぞれなのだが。

友人が数年前から株式投資を頑張っているようなのだが、先日話を聞いたところ、若干トーンダウンしているようだった。最初はもちろん儲けてやろうと思ってはじめたらしいのだが、思うようにはいかないものらしい。

そういえば、先日、不動産仲介会社の人から住宅ローンの説明を受けたのだが、諸々の説明の中で「年利5%の運用益を出すのは難しいことではないので~」というのを聞いて「ん?」となった。

実際に自分で投資をしているわけではないので細かいことはわからないのだが、年利5%というのはそれなりに頑張らないと達成できないのではないだろうか。おそらく大半の個人投資家はそのレベルに達しておらず、むしろ損をしている人も多いのではないだろうか。コンスタントに利益を上げ続けられるのならば、それだけでかなりすごいことだと思うのだが。

いまのところ、僕は儲ける目的の投資をやるつもりはない。株式投資もそうだし、FXや仮想通貨などの投機色が強いものはもちろんである。理由はシンプルで、自分が勝てる理由がないからだ。

株式市場は一般に開かれていて、あらゆる人が無条件で参加することができる。もちろん、知識も経験も資金も時間もあるプロもたくさんひしめいている。そんな場所で、知識も経験も資金もない個人の素人が偶然でも勝てるほど甘くはないのでは、と思う。

もちろん、競馬や宝くじよりは割がいいと思うし、頑張ればリターンはあるのかもしれないが、そこに時間と神経を割く気にはなれないのである。自分が勝てる道理が見つからない、というのが大きい。

ずいぶん前だが、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に、投資家として新井和宏という著名な投資家が出ていた回があって、興味深く見たことがある。

その人は、もともと外資の投資会社で金融工学を学び、バリバリに巨額の資産運用をしていた人なのだが、ストレスにより退職し、自らの思想と共鳴する仲間で投資ファンドを立ち上げたらしい。その投資会社は、日本にある「いい会社」を見つけて、そこに投資をする、という方針のようだ。

「きれいごとで投資は成り立つ」というのをモットーとしているらしい。日本に埋もれている「いい会社」を見つけ、そこに投資をしていくことは、これまでの自分の価値観を転換させる出来事だったようだ。

自分が所有している会社の株価が落ちれば、普通は損をしたくないので、売ろうとするだろう。もしも投資している会社が倒産したら、持っている株券はただの紙切れになるので、ものすごく損をすることが確定していたとしても、損切りをする、という判断もあることだろう。

しかし、本来、株というのは安いときに買って、高いときに売ることで利益を出すものだ。つまり、本来2万円の値打ちのものが1万円になっていたら、それは割安ということで、売るどころかむしろ「買い」ということになる。

株式というのは、売ったり買ったりする流動性をもっているが、その実体は「会社の権利」である。つまり、会社の分身のようなものだ。株式の値段が上下するのを見て、それで売ったり買ったりを繰り返している人は、その会社そのものがもつ値打ちがわからないので、上げ下げの情報を頼りにしているだけなのだろう。

つまり、「本来、この会社の株は2万円の価値がある」ということがわかっていれば、それをもとにいまの株価が割安か割高かがわかる。そして、本当に価値があり、今後も株価が伸びていくと見通せれば、変に売り買いせずに長期保有するものでしょう、と。

会社そのものの価値を見極めて、「応援する」気持ちをこめて株を買うということなら、やってもいいような気がする。儲けることのみを期待してやっても、多くの場合はうまくいかないだろう。もし自分が株式を買うにしても、まずはそういう視点になるのかな、と思う。

もちろん、自分で株式取引をするのではなく、投資信託などで地道に積み立てて資産形成したいと考えている人は、それはそれで好きにしたらいいと思う。しかし、株取引でうまく成長株を売り抜けて大きく儲けてやろう、と考える人はやや注意が必要である。

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