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人々の会話は未来にはどう変化していくのだろうか?

具体的な情報ソースは忘れてしまったのだが、(たぶん、ジャレド・ダイアモンドあたりの文化人類学の本だと思うが)「文明がまだあまり発達していない原初世界の人間の会話の大半を占める話題」についての話を読んだことがある。

曰く、原初世界の人間が交わしている話題として、2大トピックがある。それは、「飯の話」と「うわさ話」である。

現代社会に当てはめてもそれなりに成立するとは思うが、ほとんど娯楽らしい娯楽もない原初的な世界だとより顕著になるらしい。閉鎖的な村の中で、村人同士が寄り合うと、食料と噂話ばかりになる、と。

食料についての話題は生命維持に必要なものなのでわかりやすい。原初世界における「食料」とは、「貨幣」とほぼ同義である。噂話というのも、自分の所属しているグループの中に異変がないかを察知するためには必要なものだ。もし裏切り者がいたら、私的な制裁を加える必要もあるだろう。

しかし、これを例えば居酒屋に置き換えてみても、だいたいは似たようなものである。居酒屋でサラリーマンが話しているのも、たいていはこの話題だ。「飯」が「金」に置き換わったりすることはあるかもしれないが、それほど違いがあるわけではない。

原初世界でいい食料を大量に手に入れることと、現代社会でたくさん金を稼ぐことは、ほぼ同義だとみなすことができる。

「会話力がある」というと、基本的にはこの2つの話題に精通している、ということが能力として求められるのではないかと思う。少なくとも、たとえば哲学の話に精通していたとしても、集まっているメンバーによってはあまり盛り上がらない、ということも多いのではないか、と思う。

個人間のコミュニケーションはもちろん、週刊誌やネットなどでも、基本的にはこの話ばかりである。YouTubeなどでもそうだろう。YouTubeでヒットするネタというのは、YouTuber同士の噂話だったりする。

また、飯の話でいうと、インスタグラムは飯の写真ばかりアップされている。なので、やはりこの2つの話題は、人類にとっては2大トピックということにならないだろうか。

最近、メタバースという言葉が流行っている(よく耳にするだけで、流行ってはいないのかもしれないが)。そもそも、自分はまだメタバースの概念をあまりよく理解していないし、おそらくまだ明確に定まったものもまだないのだろう。少なくとも、自分はそれが必要だと感じたことはない。

たとえば、メタバース上でショッピングをするといっても、そんなところで買い物をしても楽しくないし、特定のものを買う必要があるなら、Amazonでキーワードを入れて購入したほうが早いので、そちらのほうが助かる。

いちいちメタバース上で特定の店まで移動しなければならないのだとしたら、そんなに煩わしいことはない。また、本当にウィンドウショッピングがしたいのだとしたら、実際に行ったほうが楽しい。

メタバースの弱点を挙げるとしたら、この「飯の話」がしづらい、というのが結構大きいのではないか、と思う。現実世界の旅行にしても、実際は「飯を食いにいく旅」というのは少なくない。有名な観光地に行って、その地域の名物を食べ、その様子をSNSにアップするのが定番の流れである。

メタバース世界は「目的地」がバーチャル空間なので、こういうことはできない。本当にデジタル世界まで入っていき、そこで食事までできたら凄いが、そういう技術はまだ当然出てきてはいないだろう。

「噂話」はすることができるかもしれないが、それもメタバース上でわざわざやるべきかな、とは思う。みんなバーチャルのアバターで、メタバース上で、人間関係の噂話をしている、というのもなんだか暗い。当然、知らない人と噂話はできないわけで、クローズドな感じにはなっていくのだろうが。

ただ、あくまでこれは「原初世界における話題」なので、未来のひとびとはどういう会話を交わしているのだろうか?

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