見出し画像

強さってなんだろうな

井上雄彦の「リアル」という作品が好きなのだが、実家に置いてあるのでこっちでまた買いなおそうかなと思ったら、kindleで配信しているということだったので、毎日一冊ずつ買って読んでいる。

電子書籍はやっぱりいいな。本屋に毎日行って本を買うのはたいへんだが、電子書籍ならワンクリックで事足りる。支払いもクレカ(デビッドカード)だし。
 
井上雄彦といえば、もちろん代表作は「スラムダンク」だ。宮本武蔵を題材にした「バガボンド」も超人気作だ。

その2つと比較すると、車椅子バスケを題材にした「リアル」は、少しマイナな部類に入るかもしれない。連載は1999年からで、既刊で14巻とのこと。

なんと20年以上連載している計算になるが、まだ完結していない。4年ぐらい休載することもある。ハンターハンターもびっくりの連載ペースである(ちなみにワンピースは97年から連載しているが、すでに96巻まで出ている)。

でも、僕にとっては永遠の名作で、この作品によって「救われた」ことは何度もある。

就職したばかりの頃、会社を辞めようか考えるほど疲れて、落ち込んで、なにげなく入った漫画喫茶でこの作品を知って、もうちょっと頑張ろうかな、と思えたことがある。

タイトルの通り、作品世界が「リアル」だし、それぞれの「リアル」と向き合う作品である。
 
主人公が何人かいる、群像劇である。

ある少女をナンパした際にバイク事故を起こし、少女を歩けなくしてしまった野宮。車椅子バスケの選手としてひたむきにバスケに取り組む戸川。自転車でダンプに突っ込んでしまい、障害者となってしまった高橋。

それぞれが、それぞれの「リアル」に向き合う。
 
繰り返し語られるのが、「強さ」だ。

元々は人気のプロレスラーだった白鳥というキャラがいて、かつては「強さ」を追い求めてひたむきにプロレスに取り組んでいたが、たどり着いた現在地が、「社会的弱者」。

「強さってなんだろうな」「強くなりてえなあ」……。
 
強さってなんだろう。自分が強い人間だと思ったことはない。小さい頃、友達同士で遊んでいても、よく泣いてひとりで帰ってくることがあった。

別にいじめられたというわけでもないのだが、とにかく傷つきやすかったのだ。小学生ぐらいの頃は、こんなに繊細で、社会に出てやっていけるのだろうかと不安になった。

就職して、「リアル」を読んだ頃は、たしかに傷ついていたし、疲れていたし、「リアル」に勇気ももらった。でも、傷ついた分だけ、強くなったと思う。
 
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」のオープニング曲になっているスガシカオのProgressという曲にこんなフレーズがある。

「あと一歩だけ前に進もう」。
 
あと一歩だけ前に進む。これが「強さ」なのかな。

サポート費用は、小説 エッセイの資料代に充てます。