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あれは実態じゃなかったんだ?

夏の暑い昼間、中学生だった私は家の手伝いとして洗い物をしていた。
流しの右側が勝手口になっていて夏は網戸になっている。
数メートル先は道路。
食器を洗い流しながらその網戸から外を見ていたらその道路を歩く女性がいた。
見るともなく通過する女性を目で追う私。
道路と敷地の境目には目隠し用に木が植えられているのでその隙間から通行人を見るのだが門の所は見通しが良い。
ショートカットの女性を目で追い門の前を通るのを待っていても一向に姿を現さない。
Uターンしたのも見ていない。不思議に思って道路に出て左右を確認したが誰もいなかった。
夏の良く晴れた日だった。
今思い返すと違和感がある。髪はショートで毛先が少し内に巻いていた。
肩から見える服はグリーンだったか青っぽかった気がする。
でも木と木の間から見えたのは胸から上だけだった。
身長も低い感じがしたが子どもでは無いという変な確信なのか思い込みがあった。
当時は当然足はあるものとみていたため足の方は記憶が無い。
怖さも無くただただ不思議に思っただけだった。
まさしく人だった。

次に経験したのが15年ほど前。
今住んでいる所に引っ越して数年たったころ。
雨上がりだったのは覚えているが季節は分からない。
車の助手席から流れる外を見ているとスーツ姿の若い男性が歩道の奥にあるとある会社の敷地内で階段を下りていった。
あんな所に下に降りる所があったんだとその時はそう思っただけだった。
だけど次に気を付けて同じ場所を見るとどこにも下に降りる場所なんて無かった。じゃああのスーツ姿の男性はどこへ?スーツの色まで覚えている。
深いグレーだった。足取りも軽く階段を下りて行ったように消えた男性。
怖さも無く普通に人だった。

いったい何だったのだろう??

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