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税収過去最高でもめでたくない理由

2018年度の税収見込み額が過去最高を更新

2018年度の税収見込み額が過去最高の60.4兆円となった。これまでの最高は1990年度の60.1兆円なので、28年かけて3000億円更新したことになる。

18年度税収のうち、所得税は19.9兆円と昨年末の補正後予算額から4000億円上振れした。所得税収が伸びたのはソフトバンクグループの資金取引「大口親子間の配当税収4000億円という一時的要因」による。ルール上は同社に還付される見通しで、19年度は同額の減収になる。つまり、約4000億円の一時的なかさ上げによって過去最高を更新した。法人税は12.3兆円、消費税は17.7兆円だった。

ちなみに1990年度の税収60.1兆円の内訳は、所得税が26.0兆円、法人税が18.4兆円、消費税が4.6兆円だった。

かさ上げを除けば60.0兆円で、未だに過去最高を更新できていないことになるが、19年度は税収62.5兆円を想定しており、ここから前述の還付分を差し引いても62.1兆円となるので、過去最高を更新するのは確実だ。とはいえ、あまり目出度いとは言えない。以下に理由を述べる。

過去最高でも、めでたくはない理由(1)

第1に、記録更新の最大の要因が消費増税によるもので、これが2兆円余りある。仮にこれを差し引くと、来年度も記録更新とはならない可能性があるのだ。

過去最高でも、めでたくはない理由(2)

第2に、消費税率を上げると、消費税収が増えるのと引き換えに、所得税収と法人税収が減ることが懸念されることだ。そうなると、総税収もピークをつけることになる。つまり、2019年度、あるいは20年度に達成すると思われる最高税収が、今後数十年にわたるピークとなる可能性があるのだ。

もっとも、所得税収と法人税収は総税収と共に、リーマンショック後にボトムをつけた後は、右肩上がりだが、これは未曽有の景気対策によるところが大きい。
参照:一般会計税収の推移
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.pdf

過去最高でも、めでたくはない理由(3)

第3に、歳出が約100兆円なので、過去最高税収とは言え、まだ40兆円弱の赤字幅が残る。ちなみに、1990年度の赤字幅は9.2兆円だった。
参照:一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/003.pdf

第2で述べた景気対策、アベノミクスによる未曽有の金融緩和は、これから銀行の淘汰が本格化すると予想されているように、大きな副作用を伴っている。

利付商品の利回りをアップするには、基本的には信用リスクを取るか、オプションを売ったプレミアムを乗せるしかない。これは、言葉を換えれば、リスクの先送りだ。利回りアップの金融商品は恐い。古くは日経リンク債から、ジャンク債、新興市場の国債、オプションがらみ。大損した人たちも多いことだろう。

政府の累積赤字や公的債務、日銀の金融緩和も同様で、とんでもなく大きなリスクを先送りすることで、戦後最長の景気拡大を謳歌していると言えるのだ。

結論

税収見込み額の過去最高更新は、とりあえずは目出度いが、リスクの先送りで達成したものであることに加え、財政赤字の解消には全く役立たないことを認識すれば、喜んでばかりもいられないことが分かる。

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