電車内リュック問題
電車内でのリュックの持ち方について。
リュックを背負ったままなのはアウトだ、というのは一般的な見解である。
前に抱えるのは、もはや常識となっている。
しかし、これに対して、前に抱えても体積は変わらないんだから同じだろ!と言う人がいる。
このことにまつわる多くの記事、議論を読んできたつもりだが、誰もこの問題の正しい結論を言わない。仕方がない。私が言おう。
問題は占有体積ではなくて、荷物が誰かの迷惑になっているということに気づくことができるかどうかである。
背負ったままではこれができない。だからアウトなのだ。これは「私は私の荷物に責任を持ちません」という意思表示に他ならない。
裏を返せば、前に抱えればそれでOKなのではなく、前に抱えた荷物が人の邪魔になりそうならば持ち方を変えたり体の向きを変えたりして、迷惑にならないように工夫しなければならない。
そうしないのであれば、やはり背負ってるのとなんら変わりない。
満員電車では下の方が比較的スペースが空いている。だから、上半身に抱えるよりも手で持ってぶら下げている方がマシな場合が多い。
学生が重たいリュックを床に置いていることがよくある。彼らのリュックは本当に重い。床に置きたくなるのも分からないではない。だが、非常に危険である。人の動きがあった際に荷物と自分がいっしょに動けなければいけない。だから、床に置いたとしても、荷物をつかんだままでいなければならない。片手では動かせないほど重い場合は、どちらかの足の甲の上に乗せることをお勧めする。そうすれば、足の力も使うことで、荷物と共に移動できる。
リュックを手で持つということは、リュックの最大の売りである、両手が空く、という機能を放棄することになる。
片手は荷物を、もう片方はつり革などを、となれば両手が塞がる。
つまり、スマホだとかを見るのは我慢しなければならない。ということだ。
スマホを見るために傘を荷物やポケットにぶら下げるというのもアウトである。
自分の荷物は自分で制御するべきである。スマホを見ると制御できないというのなら、スマホを見ることの方を諦めるべきだろう。
マナーとは他人に嫌な思いをさせない為の行動の取り方のことで、その実現のためには、自分の都合は二の次とわきまえるべきだ。それでは自分が損をするではないかという反発が予想されるが、心配ない。相手もあなたを優遇するのだから。お互い少しずつ損をしようではないか。
このことを基本において、座っている場合を考える。この場合は基本的に荷物を膝の上に乗せるべきだ。
足元に置いてはいけない。足で挟んで置けば、股が広がり、両隣の人に迷惑をかけるし、挟まずに置けば前に立っている人の迷惑になる。
膝の上に乗せている時でも、両脇から腕で抱きかかえると、両脇の人に肘が当たる場合が多いので、そうならないような持ち方を工夫すべきだ。
最近座っていて気になるのは、荷物のヒモである。キチンと座っているのだが、ヒモが私の細い太ももに乗ってたり、当たってたり。
ヒモは、自分と荷物の間にしまっていただきたい。これはまあ、神経質と言われても仕方ないかもしれないが、自分の荷物を制御できてないことは確かである。
マナーの問題というのは、他人を尊重しているかどうかの問題だ。
人は、他人からないがしろにされることに不快感を覚える生き物である。そこを基点として考えれば、まず間違いない。
こういうことをしたら、こんな臭いがしたら、こんな音がしたら、「嫌だろうな」、と他人の心中を思い遣ることができるかどうか。
(最近は、友人に非常に気を使う人が増えていて、気を使うあまり、他人を押し退けて友人のためのスペースを作る、などという事態も起きている。私はそういう被害を受けたことがある。正直、訳がわからない。いや、まてよ。ひょっとしたらこれは、超縮小版の戦争なのかもしれない。)
核心は、実質的に迷惑がかかっているかどうかではないのだ。
どうしても迷惑をかけざるを得ないシチュエーションは、厳然として存在する。その時に「悪いな」と思えるかどうか、悪いと思って改善の方向に意思を向かわすことができるかどうかなのだ。
そう考えれば、電車の中で赤ちゃんが泣いている時に保護者がどんな対応を取ればいいのかも分かるだろう。赤ちゃんが泣くのは仕方のないことである。そのことは本当に良く知っている。無理に泣き止ます必要はないし、そんなことはほぼ不可能だ。しかし、保護者はそこで開き直ってはいけない。絶えず声をかけ、目を離さないことだ。決してほったらかしにしてスマホを見ていてはいけない。
そして、うるさいと思っている人も、我慢しなければならない。それは雨が降るのと同じように仕方のないことであるし、生きている限り、自分だってどこかで誰かに迷惑をかけているのだから。それに、赤ちゃんは泣いてたって可愛いものである。うるさいけど。
そして、保護者に対しては、心の中で応援してあげてほしい。いや、ほんと大変なんだから。
私の知っている人は、「自分の体は大きいから、混雑した電車では迷惑になる」と言って、始発電車で出勤していた。
とてもそこまではできまい。だが、たとえそこまでできないとしても、それくらい気を遣って生きている人もいるのだということを知って、自分の態度を改めて振り返る必要があるということだ。
振り返ることすら嫌だというのなら、公共スペースに足を踏み入れること自体を差し控えていただきたい、というのは、果たして言い過ぎであろうか。
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