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売れるモノの方程式「ジョブ理論」

言わずと知れた名著、ジョブ理論。

読んだのは5年前の2019年ですが、当時よりも確実に日本のIT界隈でも定着してきてるなと感じます。

自分が勤める会社でも、プロダクト組織の共通言語としてよく使いますし、実際にジョブ理論にそって考えを言語化することで物事が上手く前進する実感がありますし、汎用性が高くて本当に良くできたフレームワークだなと毎回感心してしまいます。

世の中にジョブ理論を解説したブログは大量にあると思いますが、ここでは本書から個人的に印象に残った箇所を抜粋しコメントしておきます。

企業は果てしなくデータを蓄積しているものの、どういうアイデアが成功するかを高い精度で予測できるようには体系化されていない。むしろデータは、「この顧客はあの顧客と類似性が高い」「このプロダクトはあのプロダクトとパフォーマンス属性が似ている」「この人たちは過去に同じ行動をとった」「顧客の 68 パーセントが商品Bより商品Aを好む」といった形式で表現される。だがこうしたデータは、顧客が「なぜ」ある選択をするのかについては何も教えてくれない。

データは傾向を示してくれるが、Whyは教えてくれない。

ジョブ理論の中核は、顧客がなぜ特定のプロダクト/サービスを生活のなかに引き入れるのか、その理由を説明することである。顧客がプロダクト/サービスを引き入れるのは、彼らにとって重要なジョブが発生し、まだ満たされていないときに、それを解決するためだ。この なぜ を理解するかどうかが、あるイノベーションは成功し、別のイノベーションはそうでないかの分岐点となる。

顧客はある特定の商品を購入するのではなく、進歩するために、それらを生活に 引き入れる というものだ。この「進歩」のことを、顧客が片づけるべき「ジョブ」と呼び、ジョブを解決するために顧客は商品を「雇用」するという比喩的な言い方をしている。この概念を理解すれば、顧客のジョブを発見するという考え方が直観的にわかるようになる。

ジョブの基本定義は以下のとおりだ
・ジョブとは、特定の状況で人あるいは人の集まりが追求する進歩である。
・成功するイノベーションは、顧客のなし遂げたい進歩を可能にし、困難を解消し、満たされていない念願を成就する。また、それまでは物足りない解決策しかなかったジョブ、あるいは解決策が存在しなかったジョブを片づける。
・ジョブは機能面だけでとらえることはできない。社会的および感情的側面も重要であり、こちらのほうが機能面より強く作用する場合もある。
・ジョブは日々の生活のなかで発生するので、その文脈を説明する「状況」が定義の中心に来る。イノベーションを生むのに不可欠な構成要素は、顧客の特性でもプロダクトの属性でも新しいテクノロジーでもトレンドでもなく、「状況」である。

これだけでも名文だらけ。

ジョブはつくり出すのではなく、見つけ出すものだ。ジョブそのものは長いあいだ変化しなくても、解決方法のほうは時が経つにつれて大幅に変化することがある。

ティーンエイジャーには昔から、口うるさい両親に邪魔されずに連絡をとり合いたいというジョブがある。スナップチャットの考案者はティーンエイジャーのジョブをよく理解し、優れた解決策を生み出した。しかしもちろん無敵ではなく、 特定の状況 における社会的、感情的、機能的側面の入り混じったティーンエイジャーの複雑なニーズをさらによく理解した競合相手が現れれば、とって代わられるだろう。新しい技術の採用がジョブの解決方法を向上させることは多いが、ジョブそのものの理解を深めることがたいせつであり、解決策のほうに夢中になるべきではない。

解決策よりもジョブそのものの解像度を上げること。

すぐ目のまえにあるかもしれないジョブを明らかにする方法を紹介する。ヒントは身近な生活のなか、無消費に眠る機会、間に合わせの対処策、できれば避けたいこと、意外な使われ方、の5つだ。

ソニー創業者の盛田昭夫は後進に対し、市場調査に頼るのではなく、「人々の生活を注意深く観察して彼らの望みを直観し、それに従って進む」ようにと助言した。世界中にブームを巻きおこしたポータブル音楽カセットプレイヤー〈ウォークマン〉は、市場調査の結果が思わしくなく、一時的に発売が保留にされたことがあった。録音機能がないうえ、イヤホンのわずらわしさを感じる人が多いと思われたからだ。だが盛田は自分の直観を信じ、マーケティング部門の反対を押しきった。ウォークマンは、3億3000万台以上を売り上げ、個人用の携帯音楽プレイヤーという新しい文化を世にもたらした。

市場調査や数値には表れない、身近な生活からジョブを読みとって大成功した事例。

片づけるべきジョブを明らかにすることは、最初の一歩にすぎない。あなたが売るのはプログレス(進歩)であって、プロダクトではない。顧客が心から雇用したいと望み、しかも繰り返し雇用したくなる解決策を生むには、顧客の片づけるべきジョブの文脈を深く理解し、遂行を妨げる障害物も把握しなければならない。

顧客が新しいプロダクトを雇用するまえに、それと引き換えに何を解雇する必要があるかを理解すること。企業はこの点を充分に考察していない。何かの雇用の裏ではつねに何かが解雇される。

売るのは「プロダクト」ではなく「プロダクトの雇用を通して実現される"プログレス"」でないといけない。
リプレイスする代替策(今満足しきれていない解決策)が何か、というのも重要。


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