見出し画像

かわいい!が止まらない、日本画の印象が変わる「長沢芦雪展」

「え、かわいい…!」
まさか日本画を見てこんな感想を抱くとは思わなかった。日本画というと葛飾北斎や歌川国芳など教科書レベルの教養しかないのだが、一度日本画をじっくり見てみたいと思い中之島美術へ行ってきた。

お目当ては12/3まで開催している長沢芦雪展だ。

長沢芦雪展

長沢芦雪展は会期の前期と後期で見られる作品が違うとのこと。今は後期で、なんと前期の内容と9割違うらしい。9割ってほぼ全部…前期の期間に来られなかったことが悔やまれる。

お恥ずかしながら私は長沢芦雪さんのことを全く知らないのだが、最近「奇想の絵師」と呼ばれる方々に興味津々なので行くことにした。

興味を持ったきっかけは2021年に読んだ澤田瞳子さんの「星落ちて、なお」という小説だった。

***

星落ちて、なお

この本は浮世絵師として有名な河鍋暁斎の娘、とよ(暁翠)の人生を描いた物語である。偉大すぎる父を持ったことで背負わなければいけなくなった重圧や家族とのわだかまり、絵師として生きることへの葛藤など、彼女の心情が丁寧に描かれている。働く女性が良しとされなかった時代。その中でも懸命に生きる力強さに心惹かれた。

この本を読んだ時に初めて「絵師」と呼ばれる人たちのことを知りたいと思った。偉大な父、河鍋暁斎とはどんな絵師だったのか。一緒に比べられることの多い伊藤若冲はどんな絵を描くのか。調べれば調べるほど面白く、奇想の画家たちに興味が湧いたのだった。

***

会場内は撮影禁止なので会場外に置いてある看板たちとこの美術展を振り返りたいと思う。

長沢芦雪さんは幽霊画で有名な円山応挙さんのお弟子さんとのこと。会場に飾られていた円山応挙さんの幽霊画の説明に「幽霊の足がない絵を描いたら好評で弟子たちも同じように描くようになった」みたいなことが書かれていて、現代の「幽霊=足がない」の構図はこの方の影響なのだと初めて知った。

そして、メインの長沢芦雪さんの絵画である。

会場外に置いてある犬の看板

「え、かわいい…!」の嵐だった。
会場内に屏風や巻物、掛け軸などたくさんの展示があり、人はもちろんのこと鶴や雀、犬、虎、猿、亀、蛙など様々な動物が描かれていた。

日本画と聞くと人物画や風景画を想像するのだけど、こんなにもたくさんの動物たちを描いている人がいたとは。動物の絵が人気あるのって現代だけではなく、昔からの共通認識のようだ。長沢芦雪さんはゆるかわ系イラストの元祖なのかもしれない。時代によって「美しい人」の概念は変わっていると思うのだが、「かわいい」の概念は変わってないのかも。

どの絵を見ても動物たちの毛のふわふわ感がとにかくすごいのだ。膨らみのある毛並みや、鳥だと透き通った羽の美しさが目に見えて分かり、それぞれの質感まできちんと表現されていた。素人目に見ても上手いと分かる。広告のメイン画となっている牛の絵なんて、その瞳の美しさから目が離せなくなったくらいだ。

会場外に置いてある猿の絵

この猿の絵は会場内の襖にもっとたくさん描かれていた。色んな表情の猿がいて見応えがあった。

今回私が一番印象に残った作品は円山四条派合作の「亀図屏風」だった。この絵には水に浮かんだり泳いだりする亀がたくさん描かれている。合作ということで1人が水を書き、他の人たちが1匹ずつ亀を描いたという作品らしい。

どの方向を向かせるとか、どんな表情にするとか、どんなポーズにするとか、全体のバランスを見て決めているんだろうか?気軽に持ち運べる大きさでもないのだが、この共同作品をどうやって描いたのかその情景を思い浮かべながら見ると想像が膨らんで尚楽しいのだった。

長沢芦雪展ではたくさんの作品に出会えた。屏風や襖のことを想像する。本来はこんな風に保管されるのではなく、あるべき場所で日常の一つとしての役割を担っていたのだと思う。どんな場所でどんな人が所有していたのだろう。

今は大概の作品の所有者が個人蔵となっていた。個人蔵にあるのか、すごいなと思いつつも実際に使われていた時代を見てみたかった。絵画なのでどの時代でも「作品」なのかもしれないが、それでも今とはまた違った印象を受けるのだろう。

最後に今回買ったポストカードたち。

やはり動物画ばかり買ってしまったのだった。

ちなみに中之島美術館は夜も綺麗。

ライトアップされた作品の
昼の顔と
夜の顔
色んな表情が見られたのだった


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?