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花束みたいな恋をした

机の上を整理していたら期限が1月末までの映画チケットがあった。明日の午後は仕事が休みだし、久しぶりに映画館に行こう。そう決意したのが1月28日の木曜日のこと。

観る作品を決めるためにレビューサイトをひらくと、1年ほど前にお気に入りした映画がちょうど次の日から上映開始だった。
レビューを読んで良さそうだったらこの映画を観ようと思い、レビューページを開いた。「恋愛初期の全能感がなつかしい」「すごくリアルだった」というコメントが目についた。

私は少したじろいだ。リアルな恋愛…。苦手分野かもしれない。こんな青春送りたかったなぁと羨ましくなって少しの寂しさを感じてしまうかもしれないとも思ったが出演者と脚本家の名前を見て結局はこの映画を観ることにした。

いちばん後ろの席に着くと左には若いカップル、右には私と同年代くらいの女性が1人で座っていた。
思ったより人が多くて、「しまったなぁ。もう少し前のほうの席に座ればよかった。」なんてことを考えているうちに映画ははじまった。

「電車に乗っていたらということを彼は電車に揺られていたらと表現した。」
「ずっと同じことを考えている人を僕は知っている。」
「サンキュー、押しボタン式。」
「まだ上書きしないで。」

一言一句違わず覚えてる自信はないけど、言葉がとても印象的だった。麦くんと絹ちゃん、名前がかわいいね。

2人が行こうとして行けなかった単独ライブが天竺鼠だったり、カラオケで2人で歌ってる曲がきのこ帝国のクロノスタシスとフレンズのNIGHT TOWNってところが悔しい。わたしも好きだから悔しい。製作陣にこんなのがお好きでしょ?って見透かされてる気分。
絹ちゃんが好きって言った作家さんの名前、2人くらいしか分からなかったけど多分実在の人なんだろうな。私はもう少し本を読もう。

きのこ帝国の解散、シンゴジラ公開、今村夏子さんの芥川賞受賞。ぜんぶ現実の出来事だったから便乗して「私はその頃なにしてたっけ?」とちょっと振り返ってみたりもした。

幸せな瞬間が本当に2人とも可愛くて、マスクの中で口がずっと緩んでた。ガールミーツガスタンク。パフェ越しの告白。「私この絵好きです。」を繰り返し噛み締める麦くん。「女の子に花の名前を教わると、男の子はその花を見るたび一生その子のことを思い出しちゃう」って絹ちゃんの話、私は有川浩さんの植物図鑑で仕入れたよ。

少しずつ生じる2人のすれ違い。2人で食べたかったさわやかのハンバーグを結局自分だけ食べてしまったり、絹が勧めた本の扱いがぞんざいになったり。変わったのは麦くんかもしれないけど、麦くんが変わったのは絹ちゃんのため。変わるのは決して悪いことではないけれど、彼女のためを思ってしたことが彼女とのズレを生んでしまったのが皮肉だなと心が痛んだ。

別れのシーン、ファミレスという場所とあの頃の麦と絹のような若い2人が出会いと別れのコントラストをさらに強くしてて「こういうときって思い出が綺麗であればあるほど別れがたくなるよね。つらいなぁ。つらいよなぁ。」って思わず唇を噛みしめた。私の隣のお姉さんは号泣してた。

そして最後の2人、背中越しに手を振るところがよかった。

映画を観終わって。観る前はなんとなくやり切れない気持ちになって映画館を出るのかなと思っていたけれど全然そんなことはなかった。むしろ、綺麗で暖かくて少し甘酸っぱい大事な思い出をお裾分けしてもらったみたいですごく満たされた気持ちだった。
主人公同士が別れてしまう映画でこんなの変な感じもするのだけど、私がそう感じたのだからそうなのだ。似たような別れの経験がある人はまた違うことを感じるのだろうけど。
今度、今村夏子さんの小説図書館で借りよう。


蛇足1
エンドロールをぼうっと眺めてるとガスタンク叙情曲?みたいな名前の曲が目に入ってそんな曲あるの?とめちゃくちゃ興味が湧いた。ちゃんとガスタンクに合わせた音楽だったんだ…と感動した。公式サイトにあるサウンドトラックにもガスタンク・ムーヴィーという曲がある。とてもよいです。


蛇足2
私が映画を観ながら勝手に頭の中で音楽をかけていたふたつのシーンを紹介。
信号前でキスをするシーンは秦基博さんの僕らをつなぐもの。

絹ちゃんが朝帰りしたシーンは吉澤嘉代子さんの残ってる。

2曲とも歌詞全体の世界観はちがうかもしれないけれど、「赤信号に変われば決まって僕らキスをするんだ」「私まだ昨日を生きていたい」っていう歌詞がふっと心に浮かんだ。

個人的記録
公式サイト:花束みたいな恋をした
コラム:映画『花束みたいな恋をした』 坂元裕二が描く、20代の5年間の恋

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