見出し画像

「K値」に関するQ&A

新型コロナウイルスの感染者数を説明・予測する上で武器となる新たな指標「K値」。この1週間ほど、note、SNS、テレビ番組【注】などを通じて僕も積極的に情報発信させて頂きました(喫緊の重大課題に対して、使える指標や分析はすぐにでも活用すべき、既存の手法を補完すべきだと思います)。そうは言っても、「K値」の有用性について疑問視する声があることも確かでしょう。これまでSNSなどで頂いた代表的な質問は以下の3つです。

1. オフセットを取り除く(感染傾向が変わったときに累積感染者数をリセットする)のタイミングが恣意的ではないか?
2. 過去は説明できても未来の予測はできないのではないか?
3. 検査の結果明らかになった陽性者数は説明できても、真の感染者数の動向はつかめないのではないか?

以下では、「K値」発案者の中野貴志・大阪大学教授(核物理研究センター)による返答(スライド)をご紹介します。ぜひご参考下さい!

スライド1

スライド2

スライド3


以上のQ&Aに関する個人的な雑感は以下です。

1. リセットのタイミング
日本では3月下旬にリセットを行っていますが、中野教授によると、アメリカ、イタリア、ドイツ、フランス等でKの傾きの変化がマイナス(傾きがより急になる)だったケースでは、カウンターをリセットしていないとのことです。もちろん、ロックダウンや渡航制限など、感染拡大が強く抑制される場合には、カウンターのリセット無しでも「K値」の振る舞いが変化します。新たなK値の傾きを元に予測曲線を引き直して、現実のデータと照合したところ、リセット無しにも関わらず非常に当てはまりがよいことが確認できたそうです。 3月末の日本のように、Kの傾きがプラスに変化する状況で(のみ)リセットが必要になります。

2. 過去は説明できても未来の予測はできないのではないか?
Kの予測曲線は
・(累積)感染者の増加率が一定の割合で減衰していく
という仮定の下で導かれています。現実の感染者数データが予測曲線の上にうまくフィットしているということは、この単純な仮定が感染者数動向の本質をかなり掴んでいることを意味します。数理的に詳しい解説を、東京工業大学の秋山泰教授が書かれていますので、ぜひご参照下さい。
累積感染者数の変化に関する新たな指標「K値」の利点と欠点について
ただ、上の仮定はある意味で「ブラックボックス」状態で、どういう疫学的なメカニズムから導かれているか、というミクロ的な基礎付けが(現状では)ありません。この点については個人的にも興味があり、次の英文論考を書いてみました。K値と実効再生産数R(にコンセプトとしては近い指標)の関係がざっくりと分かります。こちらの内容は近いうちに日本語でも整理したいと思います。
A Note on the K-Value 

3. 検査問題
これは「K値」に限らず、新規感染者数や実効再生産数などの代表的な指標にも通じる課題です。全数検査ができない以上は、検査によって判明した陽性者数をもとに分析するしかありません。ひょっとすると、検査件数や精度などの変動に対して、指標によって影響を受けにくい・受けやすいといった違いはあるかもしれませんが、これも今後の検討課題だと思います。


【注】5/15(金)放送の読売テレビ「ミヤネ屋」で、この「K値」についてご紹介しました。放送時間も限られており、触れられなかった点もたくさんあります。以下のnote記事や動画を合わせてご参考頂ければ幸いです。

【「K値」に関するnote記事・動画】
K値が導くコロナ収束への道
スライドで分かる「K値」の考え方
スライドで分かる「K値」の使い方
【動画】「K値」ってなに? (ミヤネ屋での解説の補足)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?