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「バトー、忘れないで。貴方がネットにアクセスする時、私は必ず貴方の傍にいる。」

声優・田中敦子さんがお亡くなりになったというニュースが流れました。

嘘だと信じてネットを検索したら、どうやら、事実のようでした。

私の青春の一コマを間違いなく彩ってくれた、聞き馴染みのある声と、またお別れすることになってしまいました。

とても、残念です。
まるで自分の過去と、そして未来の一部を失ってしまったような喪失感に苛まれています。




タイトルは、田中さんの代表作とも言える、「攻殻機動隊」の映画「イノセンス」における、草薙素子(田中さん・演)のラストのセリフです。

ネタバレになってしまうので、詳しい言及はしませんが、とてもとても、意味の深い、重みのある言葉なんです。

私は攻殻機動隊はもちろん、その前身となる「アップルシード」が大好きで、私の描くSFには、少なからずその「成分」が登場しています。

そして、このセリフは、「攻殻機動隊」のファンならば、誰もが深い思い入れのあるセリフではないかな、と思います。

このセリフを、その裏側まで演じることができたのは、田中さんの演技力、
それまでに培った「草薙素子」そして「バトー」との関係性があったからに他ならない、と、私は思うのです。


逆に言えば、「田中敦子」がいなければ「草薙素子」も、いなかったのではないか、と思えるほどに。

それほど見事に、演じ切っておられました。



田中さんは、そればかりでなく、とても多くの作品でご活躍されておりました。

吹き替えで映画を観る方なら、ほぼ間違いなく、一度は耳にしたことのある声でしょう。時代を築いた名優たちの吹き替えを担当なさっています。

例えば、アイアンマンのグウィネス・バルトロー。
例えば、アンダーワールドのケイト・ベッキンセイル。


それから、ゲームをする方にも。
私の好きな作品で言えば、

ベヨネッタの「魔女ベヨネッタ」
ペルソナ5タクティカの「ジェリー」
真・女神転生V Vengeanceの「リリス」

そして、「原神」の魔女会の一人、「R」こと「レインドット」。
クレジットされていたので、その声が「いつ聞けるのか」を楽しみにしていましたし、「もしかしたらいずれキャラ実装があるかも知れない」と、期待していたのですが、結局ゲーム内では、そのお声を聞くことのないままこんなことになってしまいました。

他にも、ナレーションでも、ニュース番組やCMでもご活躍されておりました。

そのたびに、「あ、田中さんだ」と、手を止めてその声に耳をそばだてておりました。




私がよく、作中で「アルトの声」と表現する時、それは他ならない、田中敦子さんの声が脳内で再生されているのです。

noteに投稿した作品からならば、
「ボクメガ」のナオ・オーウチ・ギレット大佐。
「オツトメしましょ!」の湯浅由乃。

私が彼女たちに話をさせる時は、決まって「田中さんの声で」でした。


「いつか、彼女たちのセリフに命を吹き込んでいただきたい」


大変、僭越ではありますが、そんなことまで、考えていました。


「私は必ず貴方の傍にいる」


そんな風に、いつか言っていただけるように、がんばっていきます。
だって、それしかできないから。


心より、ご冥福をお祈りします。
そして、素敵な声と夢を、ありがとうございました。



2024.8.20
八神夜宵

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